でっきぶらし(News Paper)

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動物病院だより

 今年も9月20日より動物愛護週間が始まり、動物園でも「動物慰霊祭」が催されました。例年この日はどういうわけか雨の降ることが多いので心配しましたが、今年は天候に恵まれ、大ぜいのお客様とともに慰霊祭を行なうことができました。
 まず、午後1時30分、ラクダ舎横の慰霊碑の前で始まりの言葉があり、続いて園長より慰霊の言葉が次のように述べられました。
 「暑い、暑い夏も終わりを告げ、園内の各所に虫の音がもの悲しく聞こえる季節となりました。今日から26日まで動物愛護週間です。動物に愛情を持って接することが、如何に大切なことかを認識する週間でもあります。
 こうしてこの慰霊碑の前に立ちますと、この1年間に死んでいった動物達のことが思い出されます。昨年11月7日のことです。レッサ―パンダのタンタンが天寿をまっとうしました。昭和55年に中国の西安市から友好動物第1号として日本平動物園に来園し、以来6年余りの間、市民の皆様に親しまれてまいりました。
 又、昨年の12月13日には、珍鳥ヒゲワシのオスの死がありました。これも中国の蘭州市からの友好動物で、わずか2年に満たない期間でしたが、懸命の治療のかいもなく死んでしまいました。肺にカビのはえる難病アスペルギルス症でした。
 今年に入り1月2日、夢を食べるという伝説のあるマレーバクの母親が、突然肺炎で初夢を食べることなく死んでしまいました。残された子供は、元気に育っています。母親の分まで長生きしてください。
 その他、パラグアイカイマン、ニホンツキノワグマ、ハイイロキツネザルなど、死んでいった動物達よ、どうぞ安らかにお眠りください。
 一方誕生した動物も多く、来園するお客様に親しまれ、ほほえましい姿が見られています。これらの子供達がすこやかに育つことを祈りつつ、来年こそは悲しい報告がないことを願い、慰霊の言葉とします。」
 次に動物園友の会を代表して、会長の梅田純一様より慰霊の言葉が述べられました。
 「私達日本平動物園友の会会員は、友達になった動物達との出会いを楽しみに、毎月集まります。日本の国内では、気候と周囲の環境に恵まれたこの日本平動物園は、名前の如く日本有数の動物園として市民が誇りにする立派な施設です。
 その動物園において君達の野性味あふれる猛々しい姿、愛きょうあるしぐさのなかより、密林、原野で躍動する姿を想像し、自然世界の夢を求めてきました。そんな中で、私達に多くの思い出を残しながら不幸にも・・・病に倒れ去った動物達、思わぬ事故に遭遇した動物達、繁栄の為に犠牲になった動物達、残念ながら今年も思い返す事になりました。
 遠い遠い中国の西安市より海を渡り来て、友の会会員共々子ども動物園にて楽しんだレッサ―パンダの愛らしき姿・・・同じく中国の蘭州市より髭の動物大使であるヒゲワシの堂々たる雄姿・・・マレーバク、アフリカタテガミヤマアラシ、ウンピョウなど・・・。
 しかしながら、生前には少しでも良い環境にと、住まいにもくふうをされ食糧も充分に与える飼育職員を始め、関係職員その他多数の人々に大切にされた事を思い出してください。
 君達はこの様に多くの人々に、心の安らぎを与えて来たのです。動物園に訪れる人々の心の中には、君達の思い出がいつまでもいつまでも忘れる事なく残っているでしょう。もう出会う事がない、君達の霊よ、安らかに眠って下さい。私達が君達をいとしんだ様に、動物を愛する人達が一人でも多くなるように祈ります。君達もあらゆる動物が幸せで、長生きできるようにお護りください。」 
 慰霊の言葉の後、昨年の9月から今年の8月末までに死亡した動物の名前が読みあげられ、その名簿を慰霊碑に納めました。そして1分間の黙祷を行ない、来園者の皆さんもいっしょに慰霊碑に菊の花を供えました。私が一番たくさん供えなければ・・・。
 死亡した動物達の名簿をみながらふりかえってみますと、私にとってあらためて改めて野生動物のすごさを思い知らされたのは、昨年9月14日のニホンツキノワグマ(アキ)の死でした。
 死亡する前日の夕方、いつものようにクマ舎に入り、各々の部屋をのぞいて異常がないか見まわりを行いました。アキの寝室をのぞくと、いつもはほとんど餌がないのに、その日はかなり残っていて、動きもやや緩慢な感じを受けました。「あれっ、おかしいなあ」と思いましたが、「まあ、月太となにかあったのかなあ。明日もう1回見てみよう。」と思い、そのまま帰宅しました。翌朝、部屋をのぞくとアキはもうすでに死亡していました。「えっ、まさか。クマがこんなに簡単に死んでしまうなんて・・・。」アキを病院に運び、解剖を開始しました。腹部をひらくと、かなりの量の腹水が貯留していました。なんと結腸癌より癌性腹膜炎をおこしていたのです。採食、排便にまったく異常がみられなかったとは・・・。
 異常をできるだけはやく見い出そうと観察していてもなかなか見抜けず、手遅れにしてしまっています。こうしたことが少しでも少なくてすむよう、努めたいと思っています。
(八木智子)

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