63号(1988年05月)11ページ
野生傷病鳥獣の保護
毎年この時期になると、動物病院の中はツバメやスズメ、ムクドリのヒナ達、タヌキ、ハクビシンの子供達でにぎやかになります。毎日なんらかの野生動物が、けがをしたり弱っていて保護されてきます。では、1年を通じてどのくらいあるのか、昨年度収容されたものをあげてみましょう。
1ヶ月ごとにどのくらい持ちこまれてくるか、左のグラフにまとめてみました。やはり5〜8月が多く、この時期で年間の71%を占めています。次にどんな種類が多いかといいますと、
(哺乳類)総合計39頭(10種)
1位 タヌキ 12
2位 ハクビシン 7
3位 アブラコウモリ 7
4位 キツネ 4
(鳥類)総合計483羽(70種)
1位 ツバメ 91
2位 キジバト 62
3位 ムクドリ 39
4位 コシアカツバメ 29
スズメ 29
5位 ヒメアマツバメ 25
となっています。タヌキやハクビシンの幼獣を保護した場合は、犬猫用のミルクを与えています。目があいていない状態であれば、1日4〜5回の哺乳が必要となってきます。その時は夕方箱に入れ、家に持ち帰ってミルクを与えています。
離乳は、ミルクの中にバナナや煮イモを入れて与えることから始めます。そして哺乳回数を減らしてゆきます。
鳥類を保護した場合、体温がさがっているようであれば、まずあたためることが大切です。特にヒナは羽毛が充分はえそろっていない為、体温がさがりやすいので、まわりから保温してやる必要があります。
続いて給餌ですが、ツバメ、スズメ、ムクドリのヒナを育てたことがある方はおわかりでしょうが、1日何回、いや何十回も餌をやらなけらばなりません。ミルウォーム(コクゾウムシの幼虫)や、すり餌、ドッグフードなどをピンセットではさみ、1羽1羽口の中にいれるわけです。最初のうちは、強制的に入れたりもしますが、そのうちにお腹がすくとピーピーなきながら口をあけて催促してきます。
そうしてある程度の大きさになり、飛べるようになれば、巣立ちです。でも最初から一人前とはいかないので、お腹がすくとカゴの近くにもどってきて餌をもらい、少しずつその回数が少なくなり、巣立ってゆきます。
こうした幼獣やヒナの保護の他に、負傷して持ちこまれてくるものもあります。交通事故で歩けなくなったタヌキやハクビシン、岩場から落ちて骨折したニホンカモシカ、トラバサミで負傷したキツネなどetc・・・。
鳥類も翼や足の骨折で保護収容されます。鳥の場合、翼の骨折は致命的と言えるでしょう。うまくなおったと思っても、右と左のバランスがとれず、斜めに飛んでいったり・・・。
このように保護収容してから、治療したり、哺育、育すうをやったりした結果、どのくらいの数が野生に戻せるでしょう。昨年度では、哺乳類38.5%、鳥類31.3%でした。それらすべてが生きのびているわけではないのですから、むずかしいものです。
開園の時からこうした野生傷病鳥獣の保護を動物病院でやっているわけですが、当初哺乳類43頭、鳥類65羽だったものが、年々ふえ、開園10年目の昭和54年には哺乳類20頭、鳥類108羽、そして昨年度は哺乳類39頭、鳥類483羽となっています。この数字をどうみるか、動物達が住みにくくなったのか、皆さんの動物愛護のおかげか、それはわかりませんが、今後ますます増ふえてゆくと思います。できるだけ、放獣、放鳥できるようがんばりたいと思います。