66号(1988年11月)1ページ
レンズから見た動物達
★巳年だけれど…
エトにちなみ、ちょっとどころかたいそう苦手なヘビの撮影話をひとつ。
爬虫類の中で心穏やかに撮れるのはカメぐらいの私にとって、担当者の「この前あいつ(ヘビのこと)こんなことやってたけど、可愛いぜー」との話は、とうてい理解できるものではありません。
しかし、ヘビの色彩のあざやかさはほんのちょっぴりながらも、認めざるを得ません。といっても、担当者のように目一杯接近してマクロレンズでウロコの輝きを撮るなんて芸当は、とても無理な話。
それでなくても、カメラを構える上半身は前にゆきながら腰のほうは逆に後ろへ後ろへ。端から見ればきっと不様な格好でしょう。
その上、緊張のし過ぎで顔から汗はたらたら、カメラのレンズは曇る、メガネは曇る、です。一枚撮るのにとんでもない時間を要します。
おまけに担当者のように部屋の中に入って撮れないとあっては、アングルは限られてしまい、何とも味気ない立体感のない平面的な写真のでき上がりと相成ってしまいます。
という訳で、爬虫類館を訪れるのは一年に一度あるかないかになってしまいます。時間的には五分もあればいける山の上ですが、何と遠くに見えること、担当の方、本当にごめんなさい。
(池ヶ谷 正志)
★冬の珍客を追って
冬の使者とか、シベリアからのお客様といわれるカモ類。動物園の池にも毎年多数やってきます。その中には、時々珍客が混じっていることがあります。
そんな時は心はワクワク、何が何でも撮らずにはいられない気持ちになります。以前、アメリカヒドリがやってきた時も大いに張り切ったものです。が…。
ありったけの機材、といってもたいして持っている訳ではありませんが、すっ飛ぶように池へ。
そこには望遠鏡を持った先客がいて目差すカモの居場所を教えてくれたのですが、遠いこと遠いこと、私の持っているレンズは300ミリ、せめて500ミリは欲しいところでした。
ないものねだりをしてもしょうがなく、特ダネには違いないと、はやる気持ちを押さえながらシャッターを切りました。何と言っても、飛び立たれればそれまでです。36枚入りのフィルムは、あっという間になくなりました。
その後、アメリカヒドリが飛び去っていれば、例え証拠写真程度のものであろうと価値あるものになっていたでしょう。しかし次の日、なんと常連のカモ達に混じって目の前をスイスイ泳いでいたではありませんか。おかげでアップの写真をバッチリ撮ることができました。それはそれでよかったのですが。昨日の苦労はいったい何だったのでしょう。その時のフィルムは、未現像のままボツにするしかなくなりました。
(鈴木 和明)
★助っ人
記録班に新しい助っ人、といってもこれはカメラの話です。前々からオートフォーカス、”全自動”のカメラがあればと思っていたのですが、今回その中でも話題のカメラを購入してもらえ、早速試し撮りと相成りました。
レンズは50ミリから200ミリのマクロズームですが、現在使用しているカメラに200ミリのレンズをつけたものと比べてもだんぜん軽くて何ともいえぬ持ち易さでした。
又、ファインダーから覗き込んで中央の四角い印を被写体に向けると、レンズは自動的に動きピントが合うとピーッと音声が鳴ります。後は、シャッターを押すだけです。
しかし、少々難点があるのです。それは、獣舎の金網にくっつけてしまうとレンズが動いてピントが合わせ辛いことです。それだけではなく、やむを得ず離れると金網が入って写ってしまいます。
この点は、今使っているカメラのほうが手動の為に返って便利です。もっともオートフォーカスのカメラだって手動でできるのですが、まだそこまでの技術力はありません。
もうひとついいのは、苦手にしているフラッシュ撮影がフルオートでできることです。これは大いに活用できそうです。
それに今まで一枚一枚手で巻き上げていて、ついシャッターチャンスを逃していましたが、もうその心配もありません。ファインダーから目を離さなくていいし連写も可能。いい写真ができるのを期待していて下さい。
(佐野 一成)