でっきぶらし(News Paper)

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モンキー、この騒々しい住人達(?U)・ダイアナモンキー ジミーの始末

★ダイアナモンキー・ジミーの始末記

 マントヒヒの人工哺育にうんざりした頃に始まったダイアナモンキーの人工哺育。それはそれは愛らしい赤ん坊でした。だからこそ、忙しかった私に代わって代番の方が引き受ける気になったのでしょう。
 でも、ほぼ離乳も終えてちょくちょく散歩に出した頃に感じた、淡白さ。適当にそばにいてくれればいいよ、ぐらいの反応でした。
 今だからいえるのですが、その淡白さ故でしょうか、とんでもないことを起こしたことがあります。
 ある日、私の手を振り切って一目散に駈け出して行きました。「こらっ、何処へゆく」と慌てて追いかけていったところは、何とアメリカバイソンの放飼場。「あっ、唐ン殺される、もう駄目だ」と、顔面から血の気が引いていって、ゾーッ。当のダイアナモンキー、ジミーもアメリカバイソンを目の前にしてすくんで動けません。
 アメリカバイソンも何だろうと思ったのでしょうか。「いったいお前さんは誰だい。何をしに来たのだい」とでもいう風にのそのそと近づいて、じーっと眺めます。
 でも、それ以上は何をするでもありませんでした。大きくてもさすがに草食獣。温和な対応にほっと胸をなでおろした次第です。
 その後どうししたって?全くのお馬鹿さんは腰を抜かしたような走り方で、バイソン舎の空堀にドスン。そこで御用にしました。散歩もそれっきりやめました。
 以後、親子の同居を目指し、母親とは何とか可能になったのですが、礼儀知らずが災いして、父親からはこっぴどいお仕置きを受けて失敗。咬まれた箇所は、腕、足、尾、急所を外しているのがニクイといえばニクイ…。
 もうひとつ、この同居作業に失敗した後だった頃か、肝を冷やす事故に遭って大いに反省。勉強させられたことがあります。キーパー通路にペットケージを入れて生活させていたのですが、その下に敷いておいた冷え込み防止用の麻袋で思わぬ事故が…。
 午後一時過ぎ異常なし。で、午後三時四十分頃にそろそろ入舎の準備をと思って、ドアを開けジミーを見るとどうもおかしいのです。
 んー!?麻袋の糸が首に何重も巻きついて顔は倍ぐらいに腫れ上がり、もう失神に近い状態です。アワー、喰ったのか喰わないのか、急いでハサミを持ってきて首に巻きついた麻糸を切りました。
 恐らく、ほころびてきて麻糸をいじって遊んでいる内に首に巻きついて取れなくなってしまったのでしょう。子を育む過程では何が起きるか分からない。我が子の場合も含めてつくづく思う実感です。この場合も日中であったことが幸いでした。
 モンキー舎における人工哺育は、この後にもう一度ダイアナモンキーであっただけです。これと並行して出産したオマキザル、ニホンザルも、後にどんどん出産したブラッザグエノンも、母親としては申し分ありませんでした。
 ダイアナモンキーだっていつまでも駄目な母親ではなかったのですよ。そう、この話は次回に致しましょう。
                                           (松下 憲行)

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