71号(1989年09月)5ページ
待ちに待った赤ちゃん誕生【レッサーパンダ「キョンキョン」】
レッサーパンダの担当になって5年たちますが、国内の動物園から「レッサーパンダが生まれたよ!!」というニュースを時々耳にしながら、「いつか、うちだって…」という思いが常にありました。
当園では今までに5頭のレッサーパンダを飼育してきましたが、オスとメスの年令がかみあわず、オスが若いとメスが老令で病気になりダメ、次にメスを入れかえる頃にはオスが年をとってしまう、そんな状態できたのです。
そこで今、オスが若いうちに新しく若いメスをということで、昨年10月に長野の茶臼山動物園からメスを借りてきて、ペアを組ませることにしました。(名前は美々)
ところが、今までいたメスのユイユイがこんな娘には負けられぬとばかりに今年2月21日と3月3日に交尾をしたのです。ユイユイは、当園にとって唯一子を産んでくれたメスなのです。(この時は、乳がでていなかったのか、衰弱死)ひょっとしたらうまくいくかもと、ウキウキして待ちました。
前回の出産が6月27日だったので6月に入って注意深く観察していました。毎日ゝどうかなと思って見ても変化なし。とうとう6月も終わり、「やっぱりダメか、だけどなんとなく腹はでかいよなあー」なんてひとり言。
そして7月17日の朝のことです。いつも通り獣舎に入っていくと、ユイユイの様子が変なのです。巣箱に入ったままでてこないのです。じっと耳をすませると「ピーピー」とかすかに子のなく声がします。ひとりじゃ確信がもてないので、すぐに動物病院に電話して八木獣医と聞いてみました。「ピーピー」2人でニンマリ。「どうする?」「前回、ダメだったから、今回はとりあげようよ。」ということになり、人工哺育の準備をし、親から子をとりあげました。子は1頭、まっ白なうぶ毛、体重は114gでした。
「ヤッタ、ヤッタ」もう舞いあがりたい心境でした。名前は「キョン、キョン」としました。
以前、ハクビシンの人工哺育をやっているし、大きさも同じぐらいだからだいじょうぶだろうと思ったのがまちがい。まあミルクを飲ませるのにこんなに苦労するとは思いませんでした。なにしろ、ねむけ眼の時にやらないと、手で浮「よけて吸ってくれないのです。哺乳時刻を決めてみたものの、時間通りには飲んでくれず、泣きたくなってしまいました。
その子も日増しにレッサ―パンダらしい体毛になってきて、10月28日現在2574gとなり、盛んにいたずらをするようになりました。
来年は、そりゃユイユイと美々両方に赤ちゃんが生まれたら、もう言うことありません。
(長倉徹)