72号(1989年11月)5ページ
一九八九年の話題を追って【シロサイの来園】
二十周年を記念してやってきたシロサイ、目の前で背中だけがのそのそと動く様を見せられると、巨大な岩が動くようで何とも不気味です。そりゃあそうです。ゾウに次いで地上で二番目に大きな動物なのですから。
しかし、いろんな草食獣を見て思うのは、何とも古ぼけた感じの生き物ということ。百万年、その姿を変えていないそうですが、自ずとうなずけます。
かといって、そう馬鹿にしたものではありません。オスは四才とまだ若く好奇心も旺盛で悪戯盛り。いろんな“能力”も見せてくれました。
壊せるものなら、何でも。まずは水道管。地中に浅いと見るや角で掘り出してグニャ、大きな石もひと押しでごろり、水浴び用に作られた擬木の枝もポキリ、次は何をしでかすやら―。
意見に器用だと思ったのは、口の先です。寝室への入口にマンホールのふたがあるのですが、そのひとつがわずかに隙間があるのです。そこにあの広い口の先を入れてコトコトと回して遊ぶのです。
もっと驚かされるのは、急カーブをきれることです。でっかい奴だから、大回りしかできないと思ったら大間違い。どんどん駈けてあっ壁に当たると思ったら、前足でぐんと唐?張りお尻を振ってその場で回転、又どんどん駈けてゆくのです。
しばし、その動きのよさに見とれていました。
生きた化石なんて馬鹿にしちゃあいけません。
やや狭いと思える放飼場が、悪戯を活発にし意外に器用な一面を垣間見せてくれました。が、思わぬ効果と思ったのは、お客様に対して身近に、文字通り体臭を感じる形での展示になったことです。
人馴れしていなければストレスがたまったかもしれませんが、動物園で生まれ、動物園で育ったサイ、人は友達です。ただ音には敏感、これからも騒音、特に金属音の混じったのは要注意です。