73号(1990年01月)13ページ
臨時飼育係を勤め
日本獣医畜産大学 今泉貴善
一月、二月と何とか無事、自分に任せられた責任を果たすことができ、本当によかったと思う。僕が任せられたのは、夜行性動物館であったが、代番の時には、熱帯鳥類館と両方をやらなければならなかった。だから最初、この仕事を引き受けるにあたって、夜行性だけならなんとかやれるだろうと思っていたが、熱帯と両方となるとできるかどうか心配であった。
しかし、最終的には作業がおそくったて夕方五時三十分までには終わらせればいいんだ。餌の時間が今までよりもだいぶ遅くなってしまうが、その辺のところはしばらくの間動物達に勘弁してもらおう、などと開き直った気持になり、とにかくこの仕事を引き受けようと思った。また、実習とは一味違ったこういう機会にめぐり会えたことに感謝する気持ちでいっぱいでもあった。
十二月の終わりから、一月の始めにかけて、夜行性、熱帯とともに、担当者につきっきりで餌切り、掃除の仕方など、やるべきことを教わった。何とか、この一週間のうちでこれらの仕事をできるようにならなければと、仕事の内容を一つ一つ、メモをとりながら必至であった。
今考えると、この時が一番大変だったように思う。中でも餌切り、特に熱帯の方は、鳥の口ばしの大きさからいって、かなり細かく切らなければならないし、また、今まで包丁などもあまり使ったことがなかったので、大変苦労した。現に最初の頃は、どちらの餌切りも、一時間半ぐらいかかってしまっていた。鳥は、肉食獣などとちがい、採食の仕方は、一ぺんに食べるのではなく、一日中かけて、少しずつ食べていくような感じであり、また、鳥達が朝目覚め、行動し始める時間というのは、我々の通常の時間よりもかなり早いということもあり、どんなに遅くても午前中じゅうには、餌を与えてやらなければならなかった。
実際に一人で全部やるようになったのは、一月十日頃からだったが、その頃にはだいぶ慣れてきて、気持ちに余裕が持てるようになった。そして掃除に関しては展示室は毎日やるわけだが、窓ガラス、観客通路、フィルター、ヒヨコのケージなどは、一週間の中で、何曜日にどれをやるのだというのを決め、自分なりのペースを作った。
また、展示室に関しては、カワウソ、コウモリなどの所は広いので、これも同じようにデッキブラシでこする時に、毎日全部の箇所をこするのではなく、その展示室の中を何箇所かに区切り、今日は、どこをこするなどと決めてやるようにした。
このように、気持ちに余裕が出てきたために、自分なりにいろいろ工夫できるようになっていった。また、毎日それぞれの動物達が今日も元気かどうか、餌食い、糞の状態など行動観察することが、だんだん楽しくなっていった。
この二ヶ月の中で、動物達におきた事故というのはコウモリの子供が落ちて死んでしまったというのが三回あった。これは残念なことであったが、後でコウモリの数が多すぎるために、上でおしくらまんじゅうのようになり、子供が落ちてしまう、よくある事故だと聞いて、ほっとした。
その他は、カワウソのオスもツチブタのオスの移動などがあったが、幸い事故もおきずにやれて本当によかったと思う。
とにかく、今は一つの責任を果たせた満足感でいっぱいである。
〔最後に〕
十月から二月まで五か月間、日本平動物園で過ごさせてもらい、とてもいい経験をすることができました。この間見たり、聞いたりしたこと、そして飼育課の皆様と知り合いになれたことは、今後の自分にとって大変はげみになると思います。どうもありがとうございました。