74号(1990年03月)2ページ
あらかると
★類人猿舎完成!!
私達が待望にしていた類人猿舎が、やっと完成。そこにはゴリラとオランウータンが引越し、旧舎にはチンパンジーがそのまま残ります。
新居には、寝室を兼ねた室内展示場が三部屋もあります。旧舎に比べて、床面が広く天井も高いだけでなく、ビデオカメラがついていて出産の様子等も見れるようになっています。録画することもできます。
何よりうれしいのは、今までだと体調がよくなかったり雨で冷え込んでいても、外に出さざるを得なかったのに、これからは無理せずに済むことです。その室内では、ガラス一枚を境にするだけで、ゴリラやオランウータンを見ることができるので、きっと人気が出るでしょう。
母親が育児を放棄したときに備えて、人工哺育室も用意してあり、ミルクを飲ませているところ等、成長してゆく様子をも見られるようになっています。他にも、寝室が五部屋あります
オランウータンの放飼場も以前より広く、前面はワイヤーメッシュになっていて、大変見易くなっています。
人気のあった「ヒト」のオリも、新しくなって登場しています。どうぞ、楽しんで下さい。
後は、ゴリラとオランウータンが新居に早く慣れて一日も早い二世誕生を待つのみです。
それが取りも直さず、この獣舎が合格点をつけられたことになるのでは、と思います。
(池ヶ谷 正志)
★アメリカバイソン メリーの魅力
ここ半年以上、アメリカバイソンのメス、メリーに発情がくると、オスのジミーはメリーを部屋に入れようとはしません。入口で入れないぞとばかりに鳴いて頑張るのです。おかげで、私達は夕方になるとやきもきさせられます。
このメリーは当園で生まれた最初の子で、もう十七才になりかなり高齢です。それでも昨年の春にも出産、合計十三頭も生んでいるベテランの母親です。
オスはジミーといい、富士サファリ生まれで十才ぐらいになります。このオスが、二十一日おきに三〜四日間、メリーを部屋に入れまいとするのです。
これは、バイソンの発情の周期が二十一日のパターンだからです。この日がくると、朝部屋の入口で待つことから始まって、一日中追い回します。
私たちが見ている時には交尾はしていませんが、いない時にしているかもしれません。
それでも周期的に発情がくるのは、メリーが高齢で妊娠しにくくなった為か、オスに問題が生じたのか、何ともいえません。
いずれにせよ、この時期の夕方になるとジミーはメリーを部屋に入れまいと、入口を必死でブロックしています。メリーのほうは、お腹が空いているので入りたくて必死です。
この状況を更に詳しくいうと、メリーは放飼場の真ん中の木のところまでゆっくり歩いてゆき、ジミーがついてくるのを待って、急いで部屋の方へ走り出します。ジミーは逃すまいと、入口に先に立ちはだかります。こんなことを数回繰り返し、ジミーがちょっと気を緩めた瞬間、メリーは全速力で部屋に飛び込むのです。
ここで私たちもひと役、いかに入口の扉を早く閉めてジミーをブロックするかです。扉が重い為やテンポが遅れ、ジミーの顔をはさんでしまうことがありますが、一度は覗き込むものの仕方がないと諦め、いやいや自分の部屋へ入ってゆきます。それでも未練がましくメリーの部屋をいつまでも見ていて、しばらくは餌を食べようとはしません。
現在はまだ子供がいないから、メリーがうまくフェイントをかけ、ジミーの気が散ったところで入れるからいいのですが、以前はこうはいきませんでした。子供だけが放飼場に残り、何度もやり直したものです。
もう1頭のメス、ナオコをそんなに追うようなことがないのは、不思議といえば不思議です。八才のまだ若いメスなのに、必要以上には追いません。無論、部屋に入れないようなことはしません。
こんな光景を見ていると、年令よりバイソン的な魅力がメリーにはあるのかもしれない、そんな風に思ってしまいます。
(佐野 一成)