でっきぶらし(News Paper)

« 74号の3ページへ

動物病院だより

 新緑が目にまぶしい今日このごろですが、お変わりありませんか?三月、四月は人事異動が行なわれますが、飼育課にも新しく一人仲間が入り、病院の動物達の世話をしてくれています。
 さてこの時期は「赤ちゃん誕生」のニュースが流れてウキウキしてくるのですが、今年はあまり成績がよくないのです。期待していたツチブタはどうやら空振り、エンペラータマリン、コモンマーモセットは食殺、アクシスジカ、アカテタマリンは死産…、かろうじてバーバリシープ、タンチョウ、エリマキキツネザル、ピグミーマーモセットの出産がうまくいっているぐらいです。
 そのような状態の中で、四月七日にワライカワセミが一羽ふ化したことは、とってもうれしいニュースでした。残念なことに翌日ヒナの姿が消えてしまったのですが…、この繁殖に至るまでには、いろいろな苦労があったんです。
 ワライカワセミは非常になわばり意識が強く、オスとメスの相性の問題が大きいのです。当園には、以前オス一羽とメス二羽いたのですが、どちらのメスともうまくペアリングができませんでした。
 そこでオスの交換をしようと探していると豊橋ZOOでもうまくいっていないとのこと。さっそく交換することにしました。交換をして、お互い同居させると、両方の動物園ともトラブルなく、大成功、こうなればあとは時期を待つばかりとなりました。
 そうしているうちに、豊橋ZOOより「繁殖した」とのニュースが流れてきました。その話をよーく聞いてみるとなんと当園からでたのはメスの行動をするとのこと、「そんなことない、染色体検査をちゃんとやり、調べたんだからー、じゃもう一度調べてみましょう。」ということになり、やってみるとなんとオス2、メス1との結果がでて大あわてとなりました。大きな声では言えませんが、当園でペアリングをはかっている時に捕獲する個体をまちがってしまったようなのです。豊橋ZOOはオス2羽展示していて、当園からまちがえてメスがゆき、大成功となってしまったわけです。外観上性別がわからないものではリング等装着するのですが、それをしておかなかったミスが招いた結果でした。すみませーん!!
 そんなわけで再びペアリングをやりなおし、ようやく三月九日産卵、四月七日ふ化にこぎつけたのでした。この時は失敗に終わりましたが、五月六日に再び産卵、抱卵が始まっていますので、今度は成功させたいと思っています。
 悲しいニュースとしては動物病院にいたハクビシンの「ハッコ」の死でした。ハッコは昭和四十五年十月二日に幼獣で保護され、後藤飼育課員が人工哺育して大きくなったのです。その後、テレビや雑誌の取材もあり、人気者でした。
 私とハッコとの出会いは、私が大学生で実習していた時でした。解剖を終わり、入院動物に餌を与え、ハッコにもとケージの入口をあけたとたん、私の手にガブリ、なにがなんだかわからず、「いたいよ。」と手をふればハッコは離すまいとさらに強く咬んできました。今考えるとドジですネェ。
 私の声を聞いて飼育課の人達が来てくれ、ハッコは元のケージにもどり、私の左手にはしっかりと歯型がついていました。
 それ以来、実習生の何人かは長靴に穴をあけられたり、手をかじられたりしました。しかしそのハッコもこの頃では両眼白内障にかかり、冬になると暖房をきかせ、かぜなどひかぬよう注意をはらっていたのです。そして四月四日、膵出血で他界しました。やすらかに。

« 74号の3ページへ