でっきぶらし(News Paper)

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動物病院だより

 今年の夏は、異常な暑さでしたネ。夏バテしていませんか?
 園内に百葉箱を設置して、毎日朝九時と午後三時に、気温、湿度、その日の最高、最低の温度を記録しています。あの日、園内の温度計は朝から32℃を示しており、そして、とうとう38℃というびっくりする気温を示していました。園内、風がふいても熱風といった感じでした。
 でも、この暑さに負けじと、出産がみられました。七月五日、ホンシュウシカ、七月八日アカダイショウ、30頭ふ化。八月二日ベンガルヤマネコ、八月二十三日、ブラッザグェノン、ツチブタ、クチビロカイマン、八月二十八日コモンマーモセット二頭…。
 その中でも、クチビロカイマンは、八虫類館開館以来初めてふ化しました。何度か今までに産卵はみられたのですが、プールの中だったり、オスに食べられてしまったりして、失敗に終わっていました。
 昨年失敗してから、担当の後藤飼育課員はなんとか卵をうまくとりあげられないかといろいろ考えていました。そしてワニの展示場の奥にある予備室を利用し、その中で産んだら、入口の戸ビラを閉めてとることにして待つこと一年。六月八日、小さい方の♀が産卵、三十三ケとりあげることに成功しました。しかし、湿らせた乾草の中はかなりの湿度になっており、その中に一日置いてあった為か、今回、その内の一ケのみふ化したのです。もう一頭の♀の卵も十七ケとりあげられましたので、これがどうなるか楽しみです。
 また、ツチブタの繁殖がありました。今回は二度目。なんとか親元でと思ったのですが、♂が同居して、♀がおちつかなくしていましたので、前回同様、人工哺育することにしました。
 前回、自分で吸うまで四日ほどかかったのですが、今回は、最初から吸ってくれ、体重も一七四〇gと前回より九〇gほど大きかったです。現在、順調に体重ものびていますが、徐々に気温が下がってきていますので、カゼなどひかせないように気をつけなければと思っています。
 さて、うれしいニュースばかり書いてきましたが、悲しいニュースもお伝えしなければなりません。
 八虫類館にいき、展望地にあるカメの放飼場をのぞいたことがありますか?そこにいたアルダブラゾウガメの一番大きい♂が、八月二十五日に死亡したのです。
 この個体は、足が悪くなり、自分の意思ではうまく動けない状態で以前いたのです。
 そこで担当の後藤飼育課員は、ダイエットすれば、足に対する負担が少なくなるのではと考え、餌は、タンポポやクズの葉など雑草を与えることにしました。
 その効果あって、このところスムーズに水たまりからでたり、入ったりすることができるようになってきていました。
 ところが死亡するニ〜三日前に、水様物を吐いたり、鼻汁が見られ、餌も食べなくなってしまいました。今年の夏は異常な暑さ、バテてしまったのではと、とりあえず部屋に入れ様子を見ることにしました。
 翌日、行ってみるとこのカメは、部屋の外にでていました。口元にいろいろな草を並べてみましたが、じっとして食べる気配はありませんでした。原因がわからず、治療も八虫類ですと代謝が遅く、むずかしい病人でした。
 そして、八月二十五日とうとう死亡してしまったのです。死因は、ただ今病理検査中です。
 悪いことは続くもの。ゾウガメの死亡した翌日の午後4時すぎ、代番の鈴木飼育課員より無線で呼びだされました。
 「キリンの徳子が、立てなくなってしまった。」すぐにキリン舎に走っていくと、徳子が後足をひらいた状態ですわりこんでいました。どうやら立とうとして、後足がすべってしまったようでした。もともと前足をいためており、立ったり座ったりにはかなり神経質になっていました。
 すぐに飼育課職員集まり、なんとか後足をそろえて座らせようと、徳子が動こうとする瞬間に後足を力いっぱい押しました。五時すぎ、なんとかいつも座っている形にこぎつけ、ほっと一息。
 ところが、再び立とうとして失敗。またしても後足が開いてしまったのです。あ〜あ、まただ。同じように板や丸太を使って、足をそろえようとしましたが、徳子もかなり衰弱が見えてきていました。チェーンブロックをとりつけ、腹部をつりあげ、足の移動をはかろうとした途端、倒れ、それから三十分したでしょうか、息をひきとったのです。身体の大きな動物に対して私達はあまりにも無力だと痛感したでき事でした。
                                           (八木 智子)

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