でっきぶらし(News Paper)

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あらかると

★悩めるマンドリル

 中型サル舎の中で一番大きくて堂々としているのは何たってマンドリル。来園した時によりも体格はひと回りもふた回りも大きくなり、特駐Iな牙も大きくなって格好よく、本来ならば、これから二世の誕生が期待できるところでした。
 しかしどうしたことか、ケリー(人によって呼び方は違う)と名付けたこのオスは、自分で自分の足を咬んでしまう大変困った病気の持ち主なのです。それでも少し血がでるぐらいならまだしも、あのとがった犬歯で骨まで達しようとするほど目いっぱい咬んでしまうのです。本当に困った奴です。
 イライラするのが何が原因なのか今ひとつはっきりしませんが、何度か繰り返して血を流していました。今回のは、傷口がパックリとあいてしまう程で、放っておけなくなり麻酔をかけて縫う事に相成りました
 ぐったりと倒れているケリー、いつもの元気な姿は何処へやら、何とも哀れな感じがしてなりませんでした。もうこんな事はするなよと思っていたのも束の間、数日後に今度は反対側の右後肢のふくらはぎ辺りを穴があくほど咬んでしまいました。またもや麻酔の出番です。
 今度は傷口を縫うだけでなく、更に四本の立派な犬歯まで丸く削られてしまいました。それからは以前のようなことはなくなったものの、それでも時々傷口の辺りを咬んでいるようです。どうにかならないかとお手上げしたい気持ちですが、私も飼育係です。何とか動物の心を理解して、この問題を解決したいと思っています。
                                            (松永 享)

★ゾウもかなり歩くよ

 ゾウも走るとかなり速いのは、御存知でしょうか。草原をゆっくり歩いている時に、飛行機か何かの騒音に驚いて走り出す早さが時速四十kmはあるそうです。
 走る速さもさることながら、歩くほうも相当なものです。開園して間もない頃は、まだ小さくて一日に一回、午後に園内散歩をしていたものでした。
 ふつうに歩いている時は、ゆっくりあちこちの物に鼻をつけ臭いをかぎながら歩いています、が、急にどこかで異様な物音、特にディゼルの物音を聞いた時には、いきなり走り出しました。今でも清掃車がゾウ舎の前を通ると、耳を広げ、警戒して鳴き叫んで走り回ります。
 横について歩いている時はまだよかったのですが、時々背中に乗って散歩していた時にとんでもない目に遇うことがありました。突然走り出してコースから外れ、木の植えてある中に入ったりして、あやうく落ちそうになったこともあったぐらいです。
 かつてのそんなことを思い出しながら、通常放飼場で、どのくらい歩くのか計ることにしました。右前足と右後足がほぼ同時に動く側対足なので、この足幅で計算しました。
 早足で歩くと二三〇cmぐらいで、ふつうに歩くと二九〇cmぐらいでした。ダンボに比べてシャンティのほうがやや狭かったものの、これを基準にして朝九時より午後四時三十分までの歩行距離を計算してみました。
 ダンボ、歩数六八八八歩で十三、九km。シャンティ、歩数一二一八歩で一.八kmなんとダンボのほうが十二km以上も多く歩いています。
 日常の行動を見てもダンボは常に歩いていますが、シャンティは右前足と体をふる仕草をよく見せあまり歩きません。年下のシャンティの方が体重が二〇〇kgも多いのは、多分にこんな運動量の差がある為でしょう。
                                           (佐野 一成)

★類人猿のロープ遊び

 類人猿舎の運動場と案内の上部空間の有効利用を考え、ローブを張る事にしました。今までは天井の目を利用し、うんていで移動するのみでしたが、より変化にとんだ動きを期待して取り付けました。
 中でも活発に動くチンパンジーに大きな期待を寄せました。が、意に反して見向きもせず、子供のピーチが手をのばしてわずかにいたずらするのみ。このピーチがもう少し大きくなって他の者が真似をして広まるのを期待するしかなさそうです。
 ゴリラ舎には元々ロープが一本渡してあって、それで綱渡りをして遊んだりしている事があったので、取りつけたらすぐに利用し始めました。Uの字のいちばん低い所に腰をかけプランコする姿は、巨体に似合わず可愛らしくて人気を集めています。
 オランウータンは、私達の期待以上に活発に利用しました。取りつけたその日よりゴリラ同様にブランコ遊び、ぶら下がっているロープを思い切りゆらして次のロープに移動する等、様々な動きを見せてくれます。
 ロープからロープへの移動は野生での木から木への移動する姿を思い出させます。又、室内では暖房の吹き出し口がある所の近くの天井にロープをからませ、一本綱でハンモックを作ります。背中の真ん中にロープがくるようにうまく仰向けに寝、片手で天井のオリをつかみます。
 そのまま一晩過ごしているようで、朝、掃除に室内に入るとその真下に糞がたまっています。張り方はしっかりしたもので、体重八十kgの私がどんなに乱暴に動かしてもゆるんだりしません。
 これも、彼等が樹上生活している一つの証ではないでしょうか。本当に関心させられることばかりです。
                                          (池ヶ谷 正志)

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