79号(1991年01月)7ページ
マーモセットのあれこれ
☆体のおもさ
「わぁ、かわいい。お家に持って帰りたい。」とは、マーモセット類を見た時によく聞かれるお客様の言葉です。
手のひらにのりそうなぐらい小さいので、ついそう思われるのでしょう。では、いったい体重はどれくらいなのでしょう。
世界一大きなサルといえばゴリラで、おとなのオスは、250kgにも達します。逆にもっとも小さいサルといえばピグミーマーモセットで、体重は150gあるかないかぐらいです。
生まれたばかりの時となれば13〜15gぐらいしかなく、ヒトの指があんなに大きく(写真(1))見えるぐらいです。そんなに小さくたって、目も耳も口も鼻もちゃあんとついていますよ。
動物園でふつうに見られるコモンマーモセットで350gぐらい、かなり大きいゲルディモンキーでも600gあるかないかぐらいでしょう。
ポケットに入るぐらい小さなサル、といわれる訳です。
☆食べ物
サルの好きなものといえば、果物がすぐに浮かびます。決してまちがいではありません。でも、それだけでよいのでしょうか。
サルは果物だけでなく、木の実や種、それに虫や小動物も大好きです。そのようなたんぱく質を与えないと、健康を保つのがむずかしくなります。
特にここに紹介したマーモセット類は、小鳥やその卵、昆虫、トカゲなどを好み、ナメクジだって食べる(写真(4))ことがあるぐらいです。
夏場、セミの声がうんと近くに聞こえる時、どの種類もおいしそうな音色とばかりに声がする一点をじっと見つめます。
☆はんしょく
しっかりと栄養がつき、オスとメスの仲がよいと赤ちゃんが生れます。今までに8種類のマーモセットをはんしょくさせることができました。
面白いのは、必ずといっていいぐらい赤ちゃんはふたごで生れることです。まれに1頭、時には3〜4頭で生れることもありますが、たいていはふたごです。
背中か胸に毛のかたまりのようなのがふたつ、最初はとても赤ちゃんを抱いたりおんぶしているようには見えません。しかもお母さんでないのが面倒を見ているのですから、何とも不思議です。
☆子育てのしゅうせい
サルの親子といえば、ふつうはお母さんと子供だけの関係です。お姉さんはともかく、お父さんは子を育てるのにはまず関わりません。
でも、マーモセット類は例外です。いいえ、お父さんがしっかりするかしないかは、子が育つのにたいへんなえいきょうを与えます。当園のコモンマーモセットの場合、お父さんの育児がへただった為に3回も人工哺育をしなくてはならなかったぐらいです。
それにお兄さんやお姉さんがいれば、これも一生けんめいに面倒を見ます。11月に生まれたピグミーマーモセットの子をよく観察していると、見る度におんぶしている個体は違っていました。
☆じゅみょう
小さな動物はあまり長生きしないといわれていますが、このマーモセット類でいったいどれくらいのじゅみょうがあると思われますか。
10年は何とか生きるだろうと調べていって、目に止ったのはクロクビタマリンの13年7ヶ月の飼育記録です。更におどろいたのは、ワタボウシパンシェのオスは14年5ヶ月も生きていてまだまだ元気なことです。
他の種類では、アカテタマリンのオスが7年1ヶ月でこの後を追っています。また飼育ハンドブックには、コモンマーモセットが12年飼育された記録がのっています。
小さな体の奥に秘めている生命力には、改めて感心しました。だいじにじょうずに飼育すれば、相当に長生きすることの証明でもあるでしょう。