81号(1991年05月)5ページ
第三十二回日本動物園水族館教育研究会に参加
★記念講演「動物から学ぶヒト」 中野区立桃丘小学校教諭 黒田弘行
野生の世界をこよなく愛し、毎年アフリカに行って、動物観察を続けてきた経験をもとに、動物と動物園についての意見をお話されました。
動物園については、かなり厳しいものでした。
一、動物園の動物は、囚われた野生動物であるが、生きた標本でもある。
そのため、動物園は、野生動物の世界と人間とを結びつける数少ない場として認識することが大切である。
二、動物園は、単なる動物の見世物小屋でなく、野生動物により行なう生物教育・学習の場である。
そのため、動物園関係者は、人間と野生動物との付き合い方を伝え、野生種を繁殖し保存する責任がある。
動物については、講演と同じ内容の次の本が参考になります。
夏休みすいせん図書 五・六年向け「サバンナと野生動物」 黒田弘行著
労働旬報社、青春ライブラリー15
★第三十二回日本動物園水族館教育研究会
場所:広島 期日:平成3年6月15、16日
このたび、百三十人の参加者を集めて開催された、日本動物園水族館教育研究会に参加し、学校教育と動物園について勉強してきました。
今回の研究テーマは、「学校教育と動物園・水族館」でした。
研究発表の課題は、全部で11ありましたので、おもなものをあげてみます。
一、動物園における教育活動と学校の利用状況について
二、動物園を生かした学校生物教育
三、新指導要領、小学校理科「人体関係単元」新設に伴う動物園の利用方法について
四、新指導要領、小学校一、二年生活科の授業と動物園の利用について
五、動物園を利用した中学校、高等学校生物教育について
今回、学校教育と動物園とのかかわりについて、議論としてあげられた理由は、平成四年度から、学習指導要領が改定され、小学校の理科が大きく変わることによるものです。
この改定は、(1)小学校一、ニ年では社会と理科がなくなり、「生活科」を導入する。(2)理科は小学校三年からで、各学年に「人体単元」を親切することになった。が、おもな内容です。
今までは、「人のからだ」という単元はあったものの、今回は、人だけではなく、その他の動物や環境を含めた、大きな視点で自然を学習させようという意図が感じられます。
そこで、低学年の生活科における動物教育への期待、高学年の動物・環境教育に対する活動現場を求めることになります。そこで、動物園を教育活動の場として利用することが、今後増えることとなり、そのための体制と準備が必要となろう、ということでした。
会場の「広島市安佐動物公園」は、日本でも最も充実した動物園のひとつで、おおいに参考になりました。
動物園の規模は23haで、散策距離が5kmと広く、園の中が公園としてとてもきれいに整備されています。また、入園者数年間50万人とあわせ、ほぼ静岡市立日本平動物園の2倍の規模となっています。
この広島市安佐動物公園の最大の特窒ヘ、次の二つです。
(1)動物園の組織に「企画広報」担当をおき、野生動物の普及教育活動を積極的にすすめている。
(2)動物園の施設に「動物科学館」を配置し、展示、動物教室、スポットガイド、観察クイズラリー、標本・資料の貸出等を行なっている。
この、広島市安佐動物公園の野生動物に対する教育活動は、動物園が実施しているものとしては、日本でも代表的なものといえるので、今後、十分参考にして行きたいと思います。