82号(1991年07月)2ページ
あらかると
★ゾウの爪切り
ゾウの前肢と後肢の爪の数を御存知ですか。アジアゾウの場合、前が五つで後ろが四つ。アフリカゾウは一つ少ない四つと三つです。
あの体ですから、爪もかなり大きくて一つが五×五センチぐらいあります。その爪も頑固で、前肢でがりがりやれば少々堅い所なども掘り起こしてしまうぐらいです。
ゾウ舎の放飼場のあちこちが穴ボコだらけになっているのは、みな掘り起こした跡です。また竹などを与えると、その爪を利用して竹を割ったり、押さえつけて鼻で曲げ折る時にも使っています。
その爪も、歩き方などで伸び方が違ってきます。前肢の爪は、ダンボ・シャンティ共にきれいにそろっています。が、後肢の伸び方は悪く、特にシャンティの方は悪いのです。
これは歩かないことが原因していると思われます。ちょうど真ん中の爪が内側に伸びてくるのです。
それは切らねばならないのですが、ヒトのように簡単には参りません。爪を厚く切るのにかなり苦労します。
ナタの小さい物で削り落とすのですが、ヒトの場合でもふだんはかなり堅いように、ゾウなどは尚更でなかなか刃が立ちません。
そこでひと工夫。ヒトの場合でも水を使った後とか風呂につかった後はかなりやわらかくなります。それをゾウに利用することを考えたのです。
朝から雨が降りしっかり足がぬれた時に、更にプールにまで入れました。午後になるとこちらの思惑通り爪はかなりふやけ、削るのにちょうどいい状態に。しかし、気をつけないと深く切り過ぎて、全体に血が浮き出てくることもあります。
もうひとつ困るのは、ゾウがなかなか停止してくれないこと。そんな中での爪切りは楽ではありません。
これは、現在半年に一回のペースで行なっています。
(佐野 一成)
★オランウータンの水遊び
今年は冷夏という事で海の人出も例年に比べると少ないようですが、それでも夏。オランウータン達も少々夏バテ気味で、食欲も落ちています。放飼場に出しても、日影を求めて場所を替えていますが、床はコンクリートの為決して涼しくはありません。
そこで夏の間は日に何回か、ホースで水浴びをさせています。ぐったり横になっていたのが、むっくり起き上がってまず水を飲み、一息つくと手のひらで水をつかむようにして遊び始めます。
段々エスカレートしてくると、水の流れているところにお尻をペタッとつけて、片方の手で水をすくってもう片方の腕にかけてこすって洗ったりします。
更に乗り始めると、床に腹ばいになって二本の腕で水をかき寄せて水浴びしたり、排水口に落ちてゆく水を溝のところで腕で塞いでダムを作り、たまるともう片方の手でバチャバチャさせたりして遊びます。
ところで、水浴びをさせていて気がついたのですが、彼等は体の前がびしょぬれになってもいやがりませんが、気を効かしてシャワーのように頭のてっぺんからかけてやろうとすれば逃げてしまいます。
どうも頭の後ろから背中にかけてぬれるのが、相当にいやなようです。これはいったいどういう事でしょう。雨が降ると一目散に屋根の下に逃げ込みますが、それと似たようなものでしょうか。
それはさておき、少し暑さが和らいでくると段々と体をぬらすところが少なくなり、秋の気配が深まると水を出してやっても手のひらをぬらすか少し飲むだけで、さっさと元いた所へ戻ってゆきます。
さわやかな秋風が吹き水浴びなんかしなくても済む、早くそんな季節がやってくるのを私もオランウータンも首を長くして待っています。
(池ヶ谷 正志)