83号(1991年09月)2ページ
あらかると
★いたずら好きのシロウ
以前にも述べたように、キリン舎新築工事を行なっていますが、それに伴って現在のキリン舎の放飼場の一部を区切っています。その区切った鉄板の高さは三mあり、鉄板の向こう側にはペンキが塗られていました。
工事を始めた当時は、シロウはその鉄板に阻まれ向こう側は何も見えませんでした。その為に鉄板をペロペロなめるだけで塗料はなめとることはできませんでした。
しかし、一ヶ月半ぐら経った頃から、毎日のようにペンキがところどころはげるようになりました。それもその筈、シロウの背が二十cmぐらい急に伸びたのです。それに伴い首がしっかり鉄板を越すようになったのです。
シロウは上唇を鉄板の上にかけ、下の歯でがりがりやり始めた為にペンキが取れ出したのです。最近では口の届く範囲内は、全部かじり取るようになってしまいました。
最初は工事の騒音に驚いて放飼場を走り回り、一時はパニック状態になり前面の仮柵にぶつかり、柵がつぶれかかったこともありました。たいしたことはなかったものの、体に数ヶ所傷も負いました。
背が伸びて工事現場が見え始めた頃より、騒音にもなれたようです。お客さんも「自分の部屋ができるのを見ているんだよ」と言うぐらい、シロウの表情にも余裕が出てきました。
工事関係者の方も、シロウ、シロウと呼んでは頭をなでて仲良しになっています。もっとも、足場にある道具とかもなめて落とすいたずらもやっているようです。
これも人工哺育で育てられて人慣れしている為。これが自然哺育で育ったキリンではこのようにはならなかったと思います。工事が終わるまで、事故がないことを願うばかりです。
(佐野 一成)
★アクシスジカの道
アクシスジカの運動場は今でこそ水はけが良くなっていますが、以前はひどいものでした。ひと雨くれば水がたまり、おまけに土は粘土質ときています。
そこを細い足のアクシスジカが歩き回って、糞とおしっこが混じり合い、もうぐちゃぐちゃです。乾きが悪いので悪臭を放ち、お客様にまで臭いと言われる始末でした。
そこで一念発起。運動場に多量の砂利をかなりの厚さで敷きつめました。ところが、彼らの細い足ではかなり歩き辛いようで、時々つまずくような歩き方をしていました。
彼らは、排糞には元来無頓着です。歩きながらポロポロとところ構わずです。それが石の間に入ってしまい、取ろうとすれば石も一緒に掃き取るしかありません。
そんなことをしている内に、ある事に気付きました。石も一緒に掃き取ったところは、彼らに取ってとても居心地がよさそうな事でした。
移動する時はそのような居心地のよいところを通り、その間にも糞をポロポロです。そして、私が小石と一緒に掃き取るを繰り返します。
その度に居心地のよい場所と場所の間に小石はなくなり、彼らにとって歩き易い道ができあがりました。当然、何か特別なことがない限りその道を利用するようになります。
毎日、毎日の繰り返しが、自然にそんな道を作ってしまったのです。そう、これは野生生活にあるケモノ道そのものです。
こんな小さな運動場の中でも、彼らの習性の一コマを見ることはできるのです。皆さんも今度アクシスジカのところへ来られた時は、ぜひ運動場をよくご覧下さい。小屋から下の方へ道がついているのが分かると思います。
(池ヶ谷 正志)