84号(1991年11月)6ページ
さるの話題を追って【チンパンジーのエディ】
タオルにしっかりしがみついて、芝生の上で日光浴をするチンパンジーのエディ、今やすっかり動物園の風物詩になりました。
お客様の目につかない筈はありません。黒くて小っちゃくて可愛いのが目の前にいる、もうそれだけで大感激です。
触ってみたい、抱いてみたい、一緒に遊びたい、でもいいのかなと通り過ぎ難い表情を見せるお客様。お年寄りであれ、若い人であれ、子供であれ、顔にははっきりそう書いてあります。
担当者は良いとも悪いとも言いません。無頓着な表情で、エディを静かに見守っているだけです。
ひとり触れば、後は群集心理。我も我もで、凄い時には二重三重の人の輪ができることもあります。あれじゃあ日光浴にならないなあと、端から見ていて苦笑してしまうこともあるぐらいです。
でも、お客様からしてみれば、滅多にできない体験。思い出作りとしては、最高の場でしょう。カメラがあれば、無論いっしょにパチリです。
その前、動物園に行ってとっても楽しかった、と意外なところで耳にすることがあります。大人の社交場、赤ちょうちんなんかでです。
何のことはない、子供をだしにして楽しんでいた姿がそこにあります。そうです、動物と触れ合って自然にほころびる表情には、大人も子供もありません。みんな一緒です。
大人だけで来たって楽しめる動物園のイメージ作り、そろそろ必要な時かもしれません。かってのリッキー、セディ、そして今のエディ、彼らと接したお客様の表情を思い出す度にそう思います。
ニュースに困れば動物園に行けば、マスコミの言葉。そこにいる人間としては、サルを追え。それぐらい、サルは様々な面白い話題を次から次へと提供してくれます。
(松下憲行)