85号(1992年01月)12ページ
動物園こぼればなし 〜 実習を終えて 〜
私は現在、大学で学芸員の資格を取る為に、博物館学の講義を受けています。ここで初めて動物園には(1)社会教育(2)レクリェーション(3)調査、研究(4)自然保護という重要な役割がある事を知り、興味を持ちました。そこで、その現状を調べる為に、約1ヶ月半の間この動物園で実習をさせていただきました。
ところで、動物園がレクリェーションの要素を持つ社会教育機関である事を、どれだけの人が知っているでしょうか。恐らく教育と言ってもピンとこない人が多く、「何を学ぶのだろうか」といった人が殆どであると思います。確かに、一般の人達は動物についての知識をあまり持っていないので、それを軸にして知識を広げていく事は難しいかもしれません。しかし、動物園での教育というのは、何も動物についての難しい学問を教える事だけでなく、もっと単純で基本的な事、例えば、ヒトは、どんな動物とどの様に共存しているのか、又、これらの動物とどの様に接すれば良いのか等を教えることも教育だと思います。従って、子供から大人までの不特定多数の人が一緒に、個々のレベルに合った内容を、実物を目の前にしながら自由に楽しく学ぶ事ができます。これが学校教育とは違う動物園の利点でもありますが、不特定多数の人が対象となるので、それに十分対応できるようにしていかなければなりません。
動物園での教育手段の一つに展示があります。そこで、ある動物が生息している環境を、できるだけ再現する事によって教育的要素を取り入れれば、床が単なるコンクリートであるよりは、動物の隠れ場にもなるし、見た目も良くなるので一石二鳥であると考えました。しかし、実習をしてみると、土に尿が浸み込み、室内ではアンモニア臭がたちこめ、衛生的にも精神的にも良くない事、又、せっかく樹木を植えても、動物がいたずらをしたり、動物舎の構造上枯れてしまうので、動物によって展示方法を変えなければならない事がわかりました。
以上の様な社会教育を、より効果的に行う為には教育学的研究が重要となります。しかし、こういった研究は、他の仕事を持ちながら行う事は難しいという事もあって、あまり積極的に行われず、調査の段階で終っている様に思われます。研究は動物園の基本的機能であり、その成果が教育活動や自然保護につながっていくので必要であると思います。
最後になりましたが、長い間お世話になった職員の皆様、貴重な体験をさせていただき、本当にありがとうございました。今後、益々の発展を期待しております。
(東海大学 奥田裕子)