でっきぶらし(News Paper)

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あらかると【キリンの嫁さん】

 八十四号に書いたように、キリンの獣舎も完成していよいよシロウのお嫁さんを探すのみとなりました。と言っても、どんな個体でもよい訳ではありません。まず年齢の問題、次いで同じ亜種であることです。キリンは実に十二亜種に分かれます。
 近辺の動物園で飼育されているのは全てアミメキリンで、マサイキリンであるシロウと同じ亜種が飼育されているのは、九州の宮崎フェニックス自然公園でした。そこでは、かなりの数が飼育されているとのことでした。
 早速話をして頂いたところ、シロウに合いそうなのがいるとのこと。まずは下見、園長と二人で年末も押し迫った時ながら出掛けました。
 さすがに宮崎は暖かく、ましてや遊園地も含む二十五haもある広々とした園内を歩くとあっては、用心のジャンパーはお荷物になるだけでした。ぽかぽかする中で辿りついたアフリカ園に、キリンはシマウマやダチョウと一緒に飼育されていました。キリンは大小合わせて十五頭もが飼育されていました。
 その中で、一九八八年八月に生まれたのと一九八九年に生まれたのがシロウに合いそうでした。じっくり見ている内、先の八月に生まれたほうがよい個体のように思えました。結納の儀式は交わさなかったものの、こちらの意思を先方に伝えました。
 宮崎では、キリンは終日放飼場で過ごすとのことでした。寒い時はキリン同士が寄り添って暖め合うそうで、寒さに耐える順応性はあるようです。なお、出産する個体のみ部屋に収容するそうです。
 できるだけ早く頂きたくて今年の一月中にとお願いしたところ、快く受諾して下さいました。そうして、一月二十八日の夜にキリンの嫁入りが始まりました。
 フェリーで十五時間かけて神戸港へ。陸路を五時間経て、夕方すっかり暗くなった頃に到着しました。キリンは長旅に浸かれた様子もなく、私達をひと安心させてくれました。
 車より獣舎へ導く際も、狭い箱から出た時に走って壁などにぶつからないかと心配しましたが、全くの取り越し苦労。余裕を持って部屋の中に入り、一時間もすると餌も食べ始めました。
 数日間は、部屋に慣れさせる為に入れたままにしておくことにしたのですが、ちょっと目を離した隙に放飼場に出てしまいました。マセン棒で放飼場との出入り口を仕切っていたのですが、その棒をくぐり抜けて出てしまったのです。
 多分、宮崎での放飼場でのみ飼育されていた習慣に加え、シロウもいた為でしょう。そんな訳で、見合いすることもなくすんなり同居させられました。
 数日過ぎると、シロウにオスとしての行動が見られました。この様子では、思ったより早い時期に二世の誕生が期待できそうです。
(佐野一成)

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