85号(1992年01月)10ページ
動物病院だより
すっかり春めいてきましたが、お元気ですか。春になって気分ウキウキしていますが、そう喜ぶ人ばかりではありません。と言いますのは、このところ園内のお客様の中にマスクをなさっている方が、やたら目立つようになってきました。最初はかぜかな?と思ったのですが、どうやら杉花粉アレルギーのようです。目がかゆくなったり、鼻がムズムズ、クシャミ連発、ひどい人は、のどがかゆくてイライラしちゃうようです。
園内の人の中にも花粉症で悩んでいる人達がいてこの季節はとてもつらそうで気の毒に思います。年々軽くなるのなら良いのですが…。はやめに、薬をのんだり、目薬をさしたりすると、少しは楽になるそうですから試してみて下さい。
さて、話題を動物達にもどすことにしましょう。まず1月5日ホッキョクグマがうまれたんです。昨年はあんまりいいことがなくて、つらい一年だっただけに、今年はうまくいくかなと思っていました。
1月5日朝、クマ担当の佐野豊飼育課員より連絡があり、子が力強くなっていた、母親が落ちついているとのことでした。
あまりのぞいたりすると、親が興奮して子を食べてしまうおそれがあったので、担当者からの連絡を待ちました。
そして一時間ぐらいたったでしょうか、「子がなかなくなってしまった」とのこと。すぐに子をとりあげることにしました。人工哺育ができるまで、飼育飼長の懐で子は温められました。子はオス、体重490gでした。頭をうっている可能性があったので止血剤等を投与しました。
ミルクを与えてみたのですが、自力哺乳をしませんでした。やはり、子のダメージは相当のもののようでした。
翌日の昼頃、もう一頭出産しました。ただちに親と分け、とりあげてみましたが、子は息をしていませんでした。最初に生まれた子も衰弱が著しいので、輸液を行なったのですが、生まれて三日目に死亡してしまいました。やはり、硬膜下出血でした。
あ〜あ、今年もつらい幕あけとなりました。落ちこんでいる私に、長倉飼育課員がニコニコしながら「ペンギンがふ化したヨ」と、1月8日朝、話しかけてくれました。「へェー。やった!!」ただし油断は禁物。このペアは前回失敗していたんです。何日かして親鳥が子に餌を与えているのが確認され、まずは一安心しました。(ペンギンの子育ては、ある程度大きくなるまで、親鳥が吐きもどした物をヒナが食べています。)
こうやってうまくペアが組まれればいいのですが、オス、メスいるからとすぐに二世とはなかなかゆかないもので、動物にも相性があるようです。ですから、うまくペアとなっていた片方が死んでしまうと、その次にペアを組ませようとしても新しく購入した個体とうまくいかないという場合もでてきてしまいます。
集団見合いみたくやれればいいでしょうが、そうもゆかず、その苦労は、たいへんなのです。鳥の場合、一度にオス、メスをいっしょに入れてしまい、なわばりをつくらない時にやってみるとか、ネット越しで、ある程度の期間見合いさせてから、同居させたりします。
今回熱帯鳥類館に展示しているオニオオハシでは、まずは外見上、性別ができませんので、血液を採り、染色体を調べることから始めました。その結果、今まで飼育してきたメスに対し、始めに来園した個体はメス、そこでさらに二羽とりよせ、オス1、メス1とわかり、この中でペアを組ませることにしました。
一部屋に四羽入れ、その中で仲の良い組み合わせを見ることにしました。そして、どうにかうまくいきそうな♂と♀をのこし、他の二羽をひきあげました。さて、どうになりますことやら…。
これからは、動物達もにぎやかになってゆきます。数?遊びに来て下さいネ。