86号(1992年03月)1ページ
オランウータンを語る?V(クリコ・育児への道)
花の香りはやさしくロマンティックですが、力強さがありません。桜がすっかり葉桜に変身してしまう頃、他の樹々も負けず劣らずみずみずしく、かつ力強い青葉を身につけています。
私は、その力強い新緑のほうに魅力を覚えます。風流のない奴と思われるでしょう。そうです。甘くやさしい香りに魅力を感じないなんてどうかしています。
いつ頃からそうなってしまったのでしょう。そう、それは新しい生命の躍動をカメラで追い始めたのがきっかけです。花の季節ではない、若葉の季節こそ新しい生命が叫びを上げる時だ、無意識の内に自らの心に働きかけるようになってからです。
今回語るオランウータンは、残念ながらそのような季節感はありません。一月、二月、五月上旬、五月下旬、クリコの出産日です。他園の例まで見れば、ヒト同様にもっと様々な季節にまで及びます。熱帯出身、季節感を越えたパワーの持ち主なのです。