でっきぶらし(News Paper)

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動物病院だより

 幼稚園、保育園児あるいは小学生達が、遠足で動物園を訪れるとってもにぎやかな季節となりました。その後お変わりありませんか?よくしたもので、梅、桃、桜、フジ、ツツジと順々に咲きそろってゆきます。
 例年この季節は、なんとなくウキウキするのですが、今年は、ベビーラッシュという言葉が使えず、気が抜けた状態でいます。ペアが年令的に高令であったり、逆に若すぎたり、その他いろいろな原因が考えられますが、くやしい思いのするものもありました。
 まずは四月十七日オオアリクイの出産がありました。このメスは当園生まれの個体で、前回の出産では子は頭部打撲による脳内出血で死亡しており、孫誕生は一瞬で終わってしまいました。
 二回目は絶対に成功させようと出産予定日(交尾が確認できず。膣垢検査で一応予定をたてた日)にあわせ、部屋のかべにはベニヤ板やゴムを張り、担当者は、朝早めに出勤しては様子をみていました。
 予定日の四月十二日をすぎ、五日目の十七日の朝、担当の後藤飼育課員より電話で「生まれてるけどダメだ。」とのこと。さっそく動物園に行ってみると体重1.4kgと正常、そしてメス。死因は親がにぎり、あのするどい爪で肺まで達する穴があき肺出血となっていました。あくまでも推測ですが、出産時、子がないたことで隣りの三頭が興奮して、それにつられてこの母親も興奮してしまったのではないかと考えます。
 今年の予算でアリクイ舎の増築が計画されてます。この次こそ落ちついた所で産ませて成功させてやりたいです。
 続いてエンペラータマリン。この個体も二回の出産経験があるのですが、いずれもダメ。前回は、子が大きくひっぱりだしていたのです。
 四月二日朝、担当の松下飼育課員より「エンペラー、陣痛が始まっているみたいだけど…」と連絡があり、のぞいてみると確かに力んでいます。お腹の大きさからいってまたしても子がひっかかりでないのではと心配していたところ、案の上それからちっとも進みません。覚悟を決め、捕獲。レントゲンをとってみると、子の頭が大きくて、骨盤膣を通れそうもありません。結局帝王切開することにしました。
 ヒトと違って小型サル。子宮そのものも小さいので、慎重の上にも慎重。一頭目は、残念ながらすでに死亡、二頭目はかすかに呼吸し始めたので、すぐに手当てを行なったのですが、ダメ。親の方は、なんとか回復してくれ退院させることができました。
 こんな中で、バーバリシープ、フンボルトペンギン、エリマキキツネザル、カナダガンの赤ちゃんが大きくなっているのがせめてもの救いです。また二月二十七日に生まれたメンヨウの赤ちゃんの一頭が衰弱して、途中から人工哺育にしたのですが、その子も順調に大きくなり、子どもZOOでかけまわっています。名前は「ユキ」でーす。会いに来て下さいネ。
(八木智子)

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