でっきぶらし(News Paper)

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サルの子育てうらばなし

 動物でもっとも人気があり、何かと話題になる動物と言えば、やはりサルでしょう。喜怒哀楽をはっきり示す表情には、私達の身の回りのできごとをつい思い起こさせるものがあります。
 子育てに関する話題にしても、一つ一つの種類ごとに悩みあり笑いありで、よくもこれだけと思うぐらいです。
 まずは、スローロリスの赤ちゃんです(写真(1))。今まで一度も繁殖例はありません。なのに子育ての経験があるなんて変です。
 原因は、迷い子です。今から3年前、焼津市内の中学校に行っている子が、橋のらんかんを歩いていたと持ってきたのです。まだヘソの緒がついていて体重も50g足らずでした。
 東南アジア産なので不思議と言えば不思議ですが、こんな理由で人工哺育したこともあったのです。
 同じ仲間の原猿であるオオガラゴ、これは母親に見捨てられて人工哺育です(写真(2))。元々はひとりで生活するサル、家族で一緒に暮らしていたのがよくなかったようでした。
 気持ちを落ちつかせ、ゆとりのある中で生ませてあげたいのですが、なかなかそうできません。死なせてしまう場合もあるだけに、不幸中の幸いであったと言えます。
 シシオザルも九死に一生を得る中での人工哺育でした(写真(3))。初めての出産故か、母親は床に放っておいたままにしたのです。
 朝、発見された時は冷たくなっていて、助からないのではと思ったそうです。しかし、そこは長年の経験の功と言うか、じっくり構えて見事に育てあげました。ゴクウと名付けられたその子、今やんちゃ盛りの真只中です。
 ダイアナモンキーの子を人工哺育したケースは、ちょっと変わっています(写真(4))。高齢出産故の心配がそもそもの原因です。
 22才は、いったい人の幾つに当たるのでしょう。70〜80才のおばあさんと考えてもおかしくありません。そんなおばあさんが生んだのです。誰だって心配します。
 これも昔の経験が生きてすくすく、先のゴクウといつも一緒、仲良く遊んでいます。
 父親の面倒見が悪くて人工哺育したのは、コモンマーモセットぐらいのものでしょう(写真(5))。子育てには姉や兄も参加、つまり家族みんなで面倒を見るのが、このマーモセット類の特窒ナす。
 最初のつまづきも、新しい父親がやってきたことで解消。年を重ねるごとに賑やかな家族となり、今も6頭が忙しく放飼場を飛び回っています。
 母親から乳が出ないのでは、そんな不安から何度か人工哺育したのがピグミーマーモセットです(写真(6))。と言うのも、最初の子が生れて翌々日に死んで、調べると胃内にミルクは1滴も入っていなかったのです。
 そんな悩みも、5回目の出産の時に思い切って親に任せてうまくいったことで解決。小さなサルが更に小さなサルをおんぶ、しばらくの間よく見ることができました。
 ブラッザグェノンは、毎年のように赤ちゃんを生み続けました(写真(7))。でも、1年ぐらいで赤ちゃんは大きくならないどころか、まだまだ甘えたい盛りです。
 母親と生れたばかりの赤ちゃんとの間に割って入ろうとしたり、写真のように仕方なくお姉さんに甘えたりします。そうして、今までに10頭以上の子が育ちました。
 こんなに可愛いゴリラ、日本平動物園にいるでしょうか(写真(8))。ちょっと想像つかないかもしれませんが、メスのトトが来園して間もない頃、12年余り前の姿です。
 ヨーロッパの空を迷走して来園、やせて弱っていて無事に育てられるか不安がいっぱいでした。それが今ではぽってりもいいところ、昔日の面影はどこにあるでしょう。

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