88号(1992年07月)17ページ
動物園こぼればなし 〜 実習を終えて 〜
− 北里大学獣医学部 近藤康代 −
今までおもてからしか見ていなかった動物園を裏から見て、獣医さんや飼育係の人々の苦労が身にしみる程わかりました。
動物園といえば、子供だけでなく大人も楽しめ、動物を見て心が安らぎ夢を与えてくれる所です。健康管理、餌やり、掃除など数えたらきりのないくらい多くの仕事をてきぱきとやっている姿はすばらしいものです。きっと飼育係の人達と動物の間にはとても深いきずながあることと思います。これは飼育係の人達が、我が子のように愛情を持って動物に接しているからでしょう。飼育係の人達といろいろお話ししましたが、自分の担当の動物の話をする時は目をきらきら輝かせ、まるで自分の息子や娘の自慢話をしているかのようでした。
また獣医や飼育係には鋭い洞察力が必要だと思いました。言葉のしゃべれない動物が病気であるかどうか見抜かなければならないからです。その日の食欲や元気その他ちょとしたことが動物が病気であるかどうかのバロメーターとなりうるのです。野生動物の場合、治療が難しいので、病気の予防や早期発見が大切となり、その為に動物の観察が必要となるのです。
このように獣医さんや飼育係の人達は、いつも動物の為にいっしょうけんめい働いていることがわかりました。
今回の実習では、予想していた通り体力を消耗するものでした。普段ほとんど歩かない私にとって園内を歩くというのはとてもつらいものでした。普通に歩いていても背中に100kgくらいの荷物をしょっているかのようでした。そのうち慣れるだろうと安易に思っていましたが、疲労はたまるばかりで最後は亀くらいのスピードで歩いていました。やっぱり動物園で働くには体力が必要だと実感しました。
疲れたにもかかわらず、動物を見ると一瞬でも疲労が吹き飛んだ気がしました。2週間という短い期間でしたが、とても良い経験ができました。獣医さん、飼育係の人達にはこれからも動物の為にがんばって働いてほしいと思います。どうもありがとうございました。
− 日本動植物専門学院 深沢智恵美 −
本当は類人猿の飼育実習をしてみたかったのですが、実習期間が17日と短かった事や類人猿の飼育が大変難しいという事で、中型サルの飼育実習をさせてもらいました。
中型サルと言っても、マンドリルなどけっこう大きなサルもいて、獣舎に入ると普段と変わらない飼育係の松永さんとは反対に、私は体じゅうに力が入って緊張してしまいました。
たとえばサルの出し入れの作業をする時です。自分の手でサルを出す事の重大感で、動きがぎくしゃくしてしまいます。(松永さんの厳しい目が光っているのも、緊張感を増す原因の一つです。)
もう一つ緊張する時があります。それは私の作った餌を松永さんがチェックする時です。餌を作る時、昨日注意された事を思い出しながら、また各々のサルの顔を思い浮かべながら作るのです。けれどどうしても松永さんが「よーし」とは言ってくれません。「サルはデリケートだから・・・」とはよくわかっているのですが、やっぱり「よーし」と言ってもらいたいのです。
何事にも厳しい先生でした。あまりに口うるさくて、ちょっと嫌になった時、先生はこう言いました。「手を抜くのは簡単。だけど動物の事で手を抜いたら、おしまいだ。」と。
本当に当たり前の事です。だけど、それが大事だという事を改めて教えられました。獣舎をきれいにするのは、動物を見せる為だけでなく、動物の健康を保つ意味でも重要な事なのです。
他にも学校の机の上だけでは触れる事のできない現場の空気を知ることが出来て、非常に勉強になりました。
最後に実習中大変お世話になった飼育課の皆さん、本当にありがとうございました。この次も機会があったら実習に来たいと思いますので、よろしくお願いします。