88号(1992年07月)1ページ
あらかると【ゴリラのストレス解消】
園内の整地作業で出た大きさも太さも異なる様々な雑木を、類人猿の担当者はトラック三台分程もらい受け、ゴリラの放飼場にそのまま放り込みました。担当者は以前よりストレス解消の遊び道具として何かいいものがないかと探してしていましたから、ちょうどいい機会でした。
さて、初日。メスのトトはびっくりし警戒して近寄らず、オスのゴロンは興奮して走り回りました。が、しばらくすると落ちつき、ゴロンは小枝を持ってきては折り、ポキポキとなる音を楽しんでいるようでした。又は、はいだ皮や葉を食べたりしました。
それに飽きると、枝葉のたくさんついた木を振り回してバサバサと音をたてながら走ったり、大きな枝を放り投げたりしての遊びです。入室までの時間、以前のロープだけの時と違って、動き回って過ごす時間が多いように感じられました。
今までは、朝、放飼場に出るとロープなどを使ってひと暴れするとごろりでしたから、大変な変わりようです。
しかし、トトは居場所がなく落ち着かないようでした。ゴロンがちっともじっとしないとんだとばっちりですが、入室しても夕食を慌ただしく済ませると、すぐに台の上で寝転んでしまうぐらいでした。
しばらくすると、枝葉も枯れて遊び道具の役目を果たさなくなり、ゴロンも当初の頃よりは落ち着いてきました。それを待っていたかのように今度は、トトが小枝を使っていろんないたずらをするようになりました。
これは代番の私のミスですが、彼女の見える所に庭ボウキとホースを置いたのが間違いの元。彼女は細長い小枝を持ってきて、扉の下の隙間から辛抱強く引き寄せて放飼場に引っ張り込み、その日一日のよい遊び道具にされ、両方共使い物にならないようにされてしまいました。
更には、太い枝を利用して観察用の覗き窓を放飼場より押しつけ、扉を曲げてこれも使用不能に。メスはオスと違って、単純な遊びではなくてけっこう頭を使うものです。
これからも、よい遊び道具になる思えるものがあったら、どんどん放飼場にいれてやりたいと思います。目を輝かせ生き生き動き回る姿は、私達はもちろんお客様にとっても楽しいものでしょうし、何よりもゴリラにとって一番良い事でしょう。
(池ヶ谷正志)