88号(1992年07月)5ページ
動物から学んだ子育て【チンパンジーのパンジー】
当園のチンパンジーは、「ポコ」というオスと「パンジー」、「デイジー」というメスがいます。いずれも開園10周年記念の時、多摩動物園から当園にやってきました。
メスの2頭は、生後1年ぐらいしてチンパンジー村からでて調教をうけてチンパンジーショーにでていた経歴があります。
当園にきて翌年の11月にパンジーにメスの赤ちゃんが生まれました。どんな態度を示すか心配でしたが、パンジーはしっかりと胸に子を抱いており、授乳も確認でき、まずは一安心。名前は「ピッチ」と付けられました。
最初のうちはしっかり胸に抱いていたのですが、しばらくすると、床においたり、顔や頭をにきびつぶしのようにして傷つける行動をするようになりました。そして運が悪いことにかぜが流行。人工哺育であれば、すぐに薬を与えられるのですが、親の元にいる子に投薬することはなかなかできず、ピッチは、生後4ヵ月という短い命で他界してしまいました。
その悲しみのせいか?その後パンジーはなかなか妊娠しませんでした。そして7年後の3月3日またまたメスの赤ちゃんが生まれました。ちょうど桃の節句、そしてピッチより長く生きてほしいと「ピーチ」と名付けられました。
パンジーは前回の時に比べ、随分と母親らしい落ちつきが見られました。そんなパンジーの元でピーチは順調に育てられ、4ヵ月ぐらいたつと親が食べているものを取ってはしゃぶったりするようになりました。
5ヶ月をすぎると親から少し離れてオリに一人でつかまり、パンジーはその様子をじっと見ている、そんな親子の関係が見られるようになりました。
その後、母親から離れる距離が少しずつ長くなってゆきました。
父親のポコもピーチがよってくると両手をもって、まるで高いゝとあやしているようなしぐさをしたり、背中にのせて歩いたり、子育てに協力している姿が、そこにはありました。
そんな両親、そしてもう1頭のメスの見守る中でピーチは順調に大きくなり今年3才をむかえることができました。親と子の関係がベタベタせず、ごく自然に一人前のチンパンジーに育っていく、あ〜あ立派なものです。