でっきぶらし(News Paper)

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日本平の好記録・珍記録 〜 おみやげのキツネザル達(その2) 〜

 その1ではイタチキツネザルとハイイロキツネザルについて説明しましたが、今回はフトオコビトキツネザルとクロキツネザルについて説明します。
 フトオコビトキツネザルは、その名の通り尾の太い小型のキツネザルです。初めて来た時は、名前がわからず、夜行性動物間で展示しましたが、わずか7日で死んでしまいました。1年余後に、2頭目の「ポポ」が寄付された時、我々は大事をとって展示せずに、裏で飼育することにしました。
 ところが、冬、寒くなると、尾の付け根が赤く腫れてきて、食欲もなくなり動きも鈍くなってきたのです。これは大変だと、消炎剤等の注射をしたのですが、いっこうによくなりません。そこで、色々と本を調べてみてびっくり。何とこのサルは気候が悪くなると尾に脂肪を貯え、嗜眠状態になるというのです。尾が赤く腫れていたのは、炎症ではなく、脂肪の塊であり、動きが悪くなったのも冬眠状態に入っていたからだったのです。原因が分かってからは、冬、動かなくても何の心配もいらなくなりました。その後、オスの寄贈を待っていたのですが入らず、「ポポ」は一人きりで過ごしました。そして1991年2月に、ひっそりと死ぬまでの17年3ヶ月間、殆どお客さんの目にふれることなく、裏で飼育され続けたのですが、これは珍記録といえそうです。文献によると、このサルの平均寿命は8年位との事。生存期間は好記録でした。
 クロキツネザルは、何と6頭も寄贈されました。このサルは、オスは体毛が真黒ですが、メスは明るい褐色です。このように性によって色の違う哺乳類は珍しいのです。
 最初に入ったオスの「クロ」は、今も元気です。大型のキツネザルは、案外長命で、15〜27年の寿命があるそうです。「クロ」は今は19年飼育です。まだまだ生きそうです。犬山のモンキーセンターから来たメスとの間で、何回も子は生まれましたが、残念ながら育ったのは人工哺育の1頭だけでした。
 今、キツネザルの仲間は殆どが絶滅に瀕しています。これから稀少な動物の保護の為にも、繁殖に力を入れていきたいと思っています。
(三宅隆)

<寄贈されたキツネザル>
[性] [来園〜出園又は死亡年月日] [飼育期間・その他]
○イタチキツネザル
♀ 1973.3.11 〜 1973.12.10 9ヶ月
○ハイイロキツネザル
♀ 1973.2.18 〜 1988.8.18 15年6ヶ月
♂ 1973.5.3 〜 1983.9.13 10年4ヶ月
♀ 1977.11.3 〜 1986.9.16 8年10ヶ月
○フトオコビトザル
♂ 1972.9.1 〜 1972.9.8 7日間
♀ 1973.11.4 〜 1991.2.2 17年3ヶ月
○クロキツネザル
♂ 1973.7.4 〜 生存 19年5ヶ月以上
♂ 1974.6.2 〜 1982.1.27 モンキーセンターへ移動
♂ 1974.8.1 〜 1974.9.10 〃
♀ 1975.3.16 〜 生存 16年8ヶ月以上
♂ 1975.8.1 〜 1978.8.16 15日間
♀ 1975.10.20〜 1977.12.20 2年2ヶ月
○ブラウンキツネザル
♀ 1975.9.14 〜 1987.8.21 11年11ヶ月

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