91号(1993年01月)12ページ
動物園こぼればなし 〜 実習を終えて 〜
今回、約1ヶ月という研修期間でしたが、間際まで実習地が決まらず、あせりを感じ「動物園での実習は無理だ」と諦めかけていたところ、こちらで引き受けていただけることができ、大変感激し半分信じられませんでしたが、心から嬉しく思いました。
浜松から通うということで、最初は“何てことなはい”と思っていましたが、朝起きるのがとても辛く、眠くてしようがありませんでした。しかし、動物達を見ると、いつのまにか眠気はふっ飛んでいました。のろまな私には仕事がびっしりで、眠いなどと言ってはいられないというのが、本音だったのかも知れません。
10月26日から11月5日まで子供動物園、6日から21日までは、夜行性動物館での実習でした。
子供動物園では、4人の担当の方に2日ぐらいずつつき、ヤギ、ポニー、レッサーパンダ、アヒル等の清掃、給餌をしましたが、ここで学んだことは、放飼場に出す時、寝室に戻す時等、常に動物に声をかけるということです。そうすることが、飼育係にとっても、事故防止につながるのだと思いながらも私は、大きな声を出すのが恥ずかしいと思う気持ちがあったので、声を出せず、自分で“情けない”と思い反省しました。月・水・金曜日には、幼児教室があり、ここでは動物のことをいかに分かりやすく、幼稚園の子達に教えるか、そして親しませるかが、課題だと思います。私も、傍で手伝いながら聞いていましたが、動物好きだった子供の頃を思い出しながら、一緒に勉強させてもらいました。
そして、2週間目から夜行性動物館での実習です。しかし、3日目には仕事を任されしまい、掃除の仕方は分かりましたが、餌の量や、どの器に何を入れるのか分からず、有海さんに聞きながら、やっとできたくらいでした。それ以来、一人で何とかできるようになりました。人に頼らず、自分でやる事も覚える為には、大切な事だけれど、分からない事は聞き、確かめてしっかり覚える事も、もっと大切だと思いました。私は仕事が遅く、餌切りと清掃で1日が“あっ”という間に過ぎてしまいましたが、終わり頃には、少しだけど余裕が持てるようになったと思います。川畠さんの仕事ぶりを見ていると、私の半分の時間で手早くやってしまい、それでいてきれいなので、”やっぱりプロは違うな。”と感心してしまいました。
夜行性に限りませんが、動物の展示法としては、動物にとって生活(繁殖)しやすい環境であること、ストレスを感じさせないことが大切だと思いました。また常に、行動・排便・食欲などを見て動物の状態を把握し、健康に飼育していくことは大変なことで、ただ好きなだけでは、この仕事は務まらないと思いました。そう思うと、私はまだまだ未熟者です。
幼い頃からの夢だった動物園で、実習という形ではありましたが、仕事ができ、本当に嬉しく思います。この1ヶ月間、学校の実習や、机の上での勉強とは違い、感動的で新鮮で、書きあらわせない程数多くのことを、体で感じ学ぶことができました。また、前々から、”実習中、出産期にかからないかな”と期待していたのですが、幸運にも、フタユビナマケモノの赤ちゃんを見ることができ、光栄に思いました。きっと私には、忘れられない実習中の最大の思い出になるかも知れません。
最後になりましたが、実習中お世話になった飼育課の皆様、いろいろ足手まといであったことと思いますが、親切に御指導下さり、おかげ様で貴重な体験ができました。これからも、機会がありましたら、伺いたいと思いますので、その時にはよろしくお願い致します。長い間、本当にありがとうございました。心からお礼申しあげます。
(東京動物専門学校 寺田光代)