91号(1993年01月)7ページ
獣医さん大忙し【ヤギの口裂け】
クジャクを追い駆ける子供の姿を見ていると、正直に言って腹が立ちます。無抵抗でただ逃げ回るのをとことん追いつめることさえあるのですから、時にはプッツンきれかかることがあります。
そこへゆくとヤギ、そんな気持ちを雲散霧消させてくれます。誰がそばに寄ってこようと平気なんてものではありません。何かおいしそうなものを持っていれば、逆に寄ってゆくぐらいです。
クジャクのように放し飼いにしている訳ではありません。ですが、ヤギ舎の柵の目は荒く、子供の内は簡単に外へ出られるのです。で、好奇心の赴くままに放浪を始めます。
そんな時、事故を起こすことがあります。代番時、診察室になっているサイ舎の一室を覗くと、子ヤギが麻酔をかけられて診察台の上でぐうぐう。見れば、口の右側が横にそのまま裂けているのです。
かまれた傷ではないようでした。悪戯盛りが、悪戯の度が過ぎてつい何かに突っ込むか転ぶかして傷を負った、そんな感じでした。
後日、二、三十針は縫ったであろう傷口がどうなったのか、獣医に聞くと、やはりそのまますんなりとは、治らなかったようでした。部位が部位、食事の度に使う場所ですから、多少縫合した糸がほぐれ傷口はやや広がってしまったそうです。それでも、何とかその程度で治ったとのこと。
悪戯好きの子ヤギ達。獣医の苦労も飼育係の心配も知らないでその内に又放浪を始めるのでしょうが、お客様に安らぎを与えている点では、貢献度抜群です。