91号(1993年01月)10ページ
あらかると【カラスに餌を狙われて…】
動物園で有難くない生き物といえば、カラスとドバトがあげられます。冬になると他の場所で餌が入りにくくなるだけ、カラス達は必死になって動物の餌を狙ってきます。
室内で与える場合は何の心配もいりませんが、放飼場で与えざるを得ないとそうはゆきません。給餌時間もおおよそ決まっているので、その頃になると放飼場がよく見える高い木の枝とか、図々しいのになると放飼場のフェンスに止まったり、もっと図々しいのになると放飼場の中の木に止まって待ち構えているのです。
その上をいく奴なんかは、調理室から獣舎まで餌を運ぶ飼育係の後を木を飛び伝いながらついてきます。だからといって、むやみやたらに給餌時間を変える訳にもゆきません。
以前はしゃがんで石を拾う仕草をしただけで逃げていた奴が、この頃では木に止まっている奴に石をぶつけてやろうと投げつけても、体のすぐそばを通らなければ逃げようとはしません。逃げても隣の木に移っただけで、「アホー、アホー」と鳴かれた日には本当に頭にきます。
こっちもひとかけらもやるもんかと、取り合えずは餌を置く場所をきれいにし、そこで与えている間は掃除をしながらけんせいです。横取りなんかさせるものか、です。
この方法だと、掃除が終わる頃にはカスが残るだけ。カスをいくら食べられても何も頭にはきません。ザマー見ろです。
しかし一冬越す間には、同じ迷惑者のドバトや園内で放し飼いにしているホロホロチョウ、生まれたばかりのシカの子等が一時にはカラスの餌食になることがあります。
飼育係の泣き声が聞こえない日があっても、カラスがアホーアホーと鳴かない日はない、これ冬の動物園の常識、と思ってもらってよいでしょう。
(池ヶ谷正志)