92号(1993年03月)4ページ
出産 それぞれの経過(?T)【エリマキキツネザル 予定通りの進行】
四月の声を聞いてそれっとばかりに生まれたエリマキキツネザル、今回の出産も含めて九回の内八回までが四月で、残りの一回にしても三月の下旬です。いかに予定通り、予想通りの進行であるかがお分かり頂けるでしょう。
それに何と言っても驚かされるのが、出産の軽さです。朝、いつものように餌を作り始めて、いつものように彼らに少しだけ先に餌を与えて、第一小型サル舎のほうから作業にかかって四〜五十分経って、さあエリマキキツネザルの部屋を洗おうとしたら、もう赤ちゃんを生んでいるのです。
いったい陣痛なんて彼女達にあるのでしょうか。ついさっきまでいつもと同じパターン、妊娠末期は分かっていたって、何も変化がなければすぐ生まれるなんて誰が思うでしょう。
エリマキキツネザルに限らず、他の動物にしても陣痛が思いの他軽いのは周知の事実ですが、こうして目の当たりにすると、つい比べてはならないヒトと比べてしまいます。ヒトが例外的に重いと考えたほうが、正しいのかもしれません。
エリマキキツネザルの子の成長も、いつものようにいつものパターンです。昨年、一昨年のビデオテープを回しているようで「今年は、ここがこう違う」がありません。
母親の飼育係への対応にしても、そう。そこそこ人懐っこいのが、子が成長するに従って攻撃的になってきます。私の顔を見ると、いきなり目を見開いてフェンスに体当たりしてくるようになるのです。
オスの怯えも、いつものパターン。メスの動きにびくびくして、放飼場の隅っこで小さくなっています。この決まりきった流れで子はすくすく、子の成長率は百%です。