92号(1993年03月)6ページ
出産 それぞれの経過(?T)【アカテタマリン、最悪の事態】
どんな形であれ、生きていれば担当する者にとってはけっこう心は救われます。人工哺育はできる限り避けたい事態です。でも、むざむざ死なせるよりははるかにいい、偽らざる気持ちです。
育児の実績持ちは、アカテタマリンも同様でした。昨春に続いて今年も楽しい育児光景が見られる、百%とまではゆかなくとも、八〜九十%そう信じて疑っていませんでした。
しかし、何が原因か、残りの十〜二十%の懸念が現実に。獣医が夕方の最後の巡回の時に発見したのは、無残にも頭部に鋭い咬み傷が入った子の死骸でした。
他園でも、当園でも珍しいケースではありません。対応を間違えた時によく起こるケースです。しかし、育児の実績のあるペアが引き起こすと、どうしてもショックが強く尾を引きます。
前回とやや違った出来事と言えば、妊娠末期にオスのメスへのいじめ、意地悪がちょくちょく見られたことです。でも、不測の事態が起こる程とは思っていませんでしたし、それが原因とも判断しかねます。
だからと言って、この最悪のケースは放っておけません。次回は、最も疑わしいと思えるものを除去すべきでしょう。
その意味では、オスの別居はやらざるを得ないでしょうが、これはこれで恐い判断です。育児の七〜八割はオスが受け持つだけに、これにも育児放棄の懸念が生じます。でも、何かしなければなりません。
ストレスの除去、口で言うのは簡単ですが、実際にやるとなると、想像以上に困難です。が、先に生まれた子もいます。彼らも育児を手伝います。それに期待して、とにかく最悪の事態を脱出です。
(松下憲行)