でっきぶらし(News Paper)

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実習を終えて 日本大学 獣医学部 有田笹乃

 今回、三月一日から二十一日まで三週間実習させて頂きました。九日までキリン、ゾウ、バイソンの飼育、残りを病院で実習しました。獣医科の学生としては病院実習をお願いするのが当然ですが、幼い頃から飼育係を夢見てきた私は正直なところ飼育の実習がしたくて、動物園に来たといった感じでした。
 その為、前半の飼育実習は、特に理由はないけれど無性に好きだったキリンの飼育ができるのが嬉しくて仕方ありませんでした。そんな訳で、ゾウやバイソンには特に愛着はなかったのですが、担当の方の話を聞いたり毎日近くで観察しているうちに、それぞれの個体の特窒ェ目に入り、今までお客として見ていたのとは違った見方をするようになっていました。
 特にゾウに関しては、お客として見ている部分だけでは危険動物と言われてもピンときませんでしたが、ゾウ舎に入って観察しているとあの体の割に小さい目でちゃんとこちらの心の動きを読み取って動いているのがわかります。大型動物を動物園で飼育していくには担当者との信頼関係が重要で、そのための調教の際に危険が伴なうことを身にしみて感じました。
 飼育実習を望んでいた私にとって、今回の病院実習は、多くの刺激と感動を与えてくれるものでした。当初、私は学校で習った事がどこまで覚えられているか自信がありませんでしたし、まだ二年の段階で病院で何かできるかという心配もありました。けれども期間中運良く(運悪く?)解剖をしたり、帝王切開、人工哺育などを見学する機会に恵まれ、さらに採血や血液検査を経験することもできました。これらは学校での実習の復習と今後の授業の予習として、私に役立つものばかりでした。また、学校では写真や絵でも見られるかわからないような動物の解剖や治療を見られたのも貴重な体験でした。
 獣医は、動物の状態を診察した上で、園の経済的な状況や施設の問題などをふまえて、その後の処置を決定しなければなりません。動物に触れたり、近づいたりが好きな私にとっては、痛い経験でもあり、動物園獣医という職業の厳しさを知る良い機会でもありました。
 これから動物園は、絶滅に瀕している動物の保護、繁殖のみを目的とした施設に変わっていくのかもしれませんが、現時点では教育や娯楽としての要素の方が強いと思います。そういう意味で、今回の実習では動物園というのは人間のために作られたもので、一つの企業を経営しているようなものだということを強く印象づけられました。
 最後になりましたが、暖かい雰囲気で御指導して下さった飼育課の方々、無知な私にいろんな体験をさせて下さった獣医さん、それに私に多くの体験の機会を与えてくれた動物たちに感謝したいと思います。ありがとうございました。迷惑を承知の上でまた伺いたいと思いますので、良い獣医になれるように、御指導をよろしくお願い致します。

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