93号(1993年05月)7ページ
出産(ふ化) それぞれの経過(?U)【バーバリシープ 増えて増えて…
二十頭前後の群れが疾駆する。勇姿とまではゆかなくともなかなか圧巻のそんな光景が見られるのは、日本平動物園ではバーバリシープだけです。元を辿ればわずかに二頭ですが、旺盛な繁殖力がいつしか大きな群を構成するようになったのです。
数頭でいる内は、地味で目立たぬ存在でした。そりゃあそうでしょう。全身が茶色でオスの角が少々大きいぐらいで、全く見映えのしない野生のヒツジですから。
それがいつしか飼育係も悩ませ、人気者の素になったのは、冒頭にも述べた旺盛な繁殖力です。賑やかさ、時に子供がたくさんいる賑やかさは、お客様には大受けです。絶対の人気を博しています。
五頭から十頭、まあなんとか二十頭ぐらいまでは笑って見ていられます。しかし、三十頭も超えようとする勢いになってくるともういけません。収容能力の限界です。掃除するにも、餌を与えるにも、大いに支障をきたし始めます。
もめごと、怪我、病気も多発します。時に育児放棄も起こります。だもので必死になって貰い手を探すのですが、おいそれと見つかるものでもありません。
そうして苦労してやっと貰い手を探してほっとするのも束の間、まるでそれを待っていたかのように多くのメスが一勢に子を産み始めるのです。今年も総数八頭、これは一種の年間繁殖数としてはダントツトップです。他の追隨を許してはいません。(哺乳類の中でです。)
来年か再来年、またなんとかしてくれと担当者は悲鳴をあげるかもしれません。それとは裏腹に、子供がいっぱいいる暖かい雰囲気はお客様の人気を博し続けるでしょう。