でっきぶらし(News Paper)

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出産(ふ化) それぞれの経過(?U)【シシオザル】

 今や貴重なサルとなったシシオザルですが、ニホンザルと同じマカクの仲間で、どちらかと言わなくとも丈夫で飼い易いサルです。それが何故、絶滅の危機に瀕したのでしょう。乱獲、環境破壊以外のことは浮かびません。
 それはさておき、当園のメスの育児能力には大いに疑問符がつくどころか、母親失格の烙印さえ押してもいいぐらいです。「ゴクウ」と名付けられた子は、母親に見捨てられ虫の息になっていたところを見つけられ、そこから回復しての人工哺育でした。二度目は絶命してなす術なし、これ以上何も語る必要はないでしょう。
 今春、予定日が迫りつつある時、誰か楽しみにしている者はいたでしょうか。いかに貴重なサルであっても、人工哺育では喜びは湧きません。何度も言いますが、親が大きくしてこそ意味も意義もあるのです。
 気が重く失望的な観測しか思い描けない中で、シシオザルが出産。しかし、いつもとはちょっとばかり様子が違いました。丸つきしの育児放棄ではなかったのです。
 と言っても、抱いている、胸に寄せている格好には程遠く、何か扱いに困ったモノを持っている感じでした。出産を積み重ねてようやく湧いてきた母性愛ですが、子をまともに取り扱うには程遠い姿勢でした。
 結局、子は人工哺育となりました。あの取り扱いを見ていれば、やむを得ぬ判断です。結果を考えれば多少空しくなりますが、大事な命をむざむざ死なせる訳には参りません。
 でも、主観的願望であれ、母性愛を示したことに今後に期待したい気持ちになります。ダイアナモンキーのように何度か失敗を繰り返した後に、ちゃんと育てるようになったケースもあるのです。モンキーから離れた私でさえこう、担当者はもっと切実な思いで願っているでしょう。

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