94号(1993年07月)1ページ
開店!!動物病院
前号で完成をお伝えした園内動物病院が機能し始めました。9月上旬に園内のあちこちに分散して飼育されていた入院動物、野生保護動物などを病院へ移し、本格的な使用が始まりました。まだすべての設備がそろったわけではありませんが、ほぼ日常の飼育、診療には問題無く対応できるようになりました。しかし機材の使い方に馴れず、どこに何があるのかも覚えていない為、能率的な作業と言うのにはほど遠い状態です。使いこなすまでにはもう少し時間がかかりそうです。新しい病院は、病院という施設の性格上残念ながら一般のみなさんに自由に見て頂くというわけにはいきません。そこで内部がどのようになっているのか少し御説明しましょう。平面図を見ながら頭の中で様子を描いてみて下さい。いまみなさんは病院の玄関に立っています。小さな玄関を入るとすぐ左側には哺育室があります。ここは人工哺育の動物を育てる為の室です。保育器などが置いてあります。もう一つ奥の左側のドアを開けると入院室になっています。園内の動物がケガをしたり、病気になったりするとこの室に入院します。小鳥やリスザルのような小型の動物からトラやクマのような大型の動物まで収容できるように大小いくつかの種類のケージ(檻)が備わっています。入院室の奥には野生獣収容室があります。ここにはタヌキ、シカなど保護された野生の傷病獣が入ります。さて、玄関から入って右には手術室があります。手術室は診察室と一体になっています。動物の治療はこの室で行ないます。手術室の奥にはレントゲン室と薬品室があります。玄関から続く廊下を奥へ進むと検疫前室があります。検疫前室は奥の3つの検疫室に通じています。検疫室は新しく動物園に入ってきた動物が病気を持っていないか検査する間留めておく為の室です。万一伝染病などを持った動物が入って来ても、他の動物に感染しないように、入院室などからは完全に隔離された室となっています。一階廊下のつきあたりは解剖室です。園内の動物が不幸にして死亡した時にはすべて解剖し、死因を明らかにします。その解剖を行なう為の室で、大小2台の解剖台、冷凍室などが備わっています。
では、2階に上がってみましょう。2階は2つのブロックに分けられています。一方には検査室、事務室、小会議室、書庫などがあります。検査室では血液、細菌検査など様々な検査や、簡単な実験などを行ないます。分析器、遠心器など色々な機材が置いてあります。事務室では入院室、哺育室などに収容した動物をモニターで観察することができます。2階のもう一つのブロックは鳥を収容するスペースになっています。ここには孵卵室、育雛室、野生鳥収容室などがあります。孵卵室は、鳥の卵を人工的に孵化させる為の室で孵卵器が置かれています。育雛室は孵化したヒナを育てる為の室で、成長段階にあわせて2種類の室を用意してあります。野生鳥収容室は保護された野生の傷病鳥を収容する為の室です。野生復帰へ向けてのリハビリが行なえるように屋外へ続く大きなケージが数室用意されています。こうやって見て?頂いたとうり、かなり大きな病院です。動物の収容能力も旧病院に比較して大幅にアップしました。しかし新病院完成がニュースで流れた事もあってか、タヌキなどの野生動物の保護が急に増加し、もはや野生獣検疫室はいっぱいです。なぜか入院動物も重なり、開店早々商売繁盛の状態です。病院が繁盛というのはありがたくない話ですが…。