94号(1993年07月)5ページ
開園以来の動物【ポニーのマミー】
今もすこぶる健在、そう言い切っていいでしょう。マミーの朝のひと仕事は、メスのポンの部屋に入りにおいをひとしきりかぐことです。目的はもちろん、ポンが恋のにおいを発散させているかいないかです。
二週間おきにきちんとやってくるにおいに反応は敏感です。正に鼻息荒くポンに突進します。が、交尾の下手なことはこの上なしです。
前担当者は、それでも二頭繁殖させています。ふつうなら何も驚きもしませんが交尾が下手なのにどうして、とは思いました。
内輪の話を聞かせれば、不思議ではなくむしろ苦笑してしまいます。そこには当時の担当者のちょっとした工夫と思いやりがありました。
介添え保育って聞いたことがあるでしょうか。母親が育児をうまくできない時、担当者が育児を手助けするのを差して私達が使う言葉です。
つまり、そこには介添え保育するような介添え交尾があったのです。興奮してその気になった時、交尾を手助けしていたのです。そのコツを私も教えてもらいましたが、感想を問われると返答に困ります。
マミーは二十四年前の開園式を彩った動物の一頭です。東山動物園より開園祝いの親善大使として贈られてきたのです。当時、本当に小さい愛らしい子馬でした。
大きくなってちょっぴり悪いクセも出てきて飼育係を悩ませたりもしていますが、ずっと可愛がられてきて、今も可愛がられている、と言ってもよいでしょう。
そうそう、悪いクセとは気に入らないとやたら咬みつくクセです。園内を自由に歩き回っている子ヤギもマミーには近づきません。それと実習生、やはり弱々しい態度を見抜かれてかぶりとやられます。
それ以外の人には何もしません。二十四才、それなりにしたたかな年齢のようです。