94号(1993年07月)7ページ
開園以来の動物【クマのツキタ】
私の記憶違いでなければ離乳したばかり0ぐらいの小さい時にやってきています。当時の担当者、よく散歩に連れ出していました。
では、よく遊んだのだろうと思われそうですが、残念ながらそれは皆無。当時はまだ半人前、好奇心だけは一人前だったものの、クマにはさすがに憶しました。
担当者に「おとなしいよ。何も恐くないよ」と言われて、ちょっぴりその気になって少しは触ってみましたが、そこまででした。そうこうしている内にすくすく、いつしか散歩している姿は見られなくなりました。
ツキタ、オスと間違われたメスのチュウタ、それにアキ、この三頭の穏やかな日々はどれぐらい続いたでしょう。ツキタが父親になったこともありました。
まず衰えを見せたのはアキではなかったかと思います。それから何年か後、チュウタもその後を追ってゆきました。
元来が単独生活のツキノワグマです。ひとりぼっちでかわいそうは、ヒト自らが豊かな社会生活を営む故の感傷的な見方です。
ですが、放飼場にぽつんと一頭でいる様は、かつての賑やかさを見ていただけに私達の目にも寂しく映りました。そんな風に見ている内にメスの子グマを保護、なんとか連れ合いになるかもとも思いましたが…。
見るからにじいさんと孫です。それなりにバランスのとれたは、とても無理注文でした。
それに最近示す著しい衰えはいかんともしがたく、その後のこと、メスがひとりぼっちになる心配すらしなければならぬ状況です。
メスも最初は少し恐がっていたそうですが、動きの鈍さに加え右後ろ足が悪いのを見抜いて、けっこう馬鹿にすることがあるそうです。老いは、哀しやになるでしょうか。