でっきぶらし(News Paper)

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開園以来の動物【カルフォルニアアシカ チビとボス】

 二年前でしょうか、敬老の日にちなんで、ボスと今はなきジュンの長老の表彰がありました。開園当初にアシカを担当していた者なら、これを変に思った筈です。つまり、もう一頭を忘れていないかとです。
 開園当初に飼育されていたのが、五頭。二頭が病気と事故で死に、二頭ほど後に私の担当になった時には、オスのボスとメスのジュンとチビがいました。
更にその後、オスとメスが各一頭ずつ新たに入ってきましたが、そう長く飼育される ことはありませんでした。開園以来のチビとボスを語るにどうでもいいような話ですが、実はここに間違いの元があるのです。
 と言うのは、彼らの戸籍とも言うべき台帳に間違ってチビが死んでしまったように記入されてしまったのです。誰も気に取めないまま担当者は次々に替わり、いつしか本当のように思われてしまったのでしょう。
 でも、私にとってチビは忘れられぬ思い出深いアシカです。誰がどうして間違えましょう。先に死んだメスのアシカのことだってよく覚えています。
 目がくりっとして人懐っこく、特別に目をかけてちょっとえこひいきもやったものです。そりゃあそう、制服でいたって、私服でいたって、真先に私を見つけてプールに飛び込んでくるのは彼女で、愛くるしい眼差しで、こちらをじっと見つめたのですから―。
 遠い昔日のそんな思い出にひたりながらチビとボスを眺めても、全く我れ関せずの風でのんびりと昼寝を決め込んでいます。まっ、開園以来の記載を間違えていようといまいと、彼らにすればどうでもいいことでしょう。
 そう思える、元気そうな姿が何よりも救いです。その平穏な様子、永遠にとは言いませんが一日でも長く続いて欲しいものです。
(松下憲行)

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