でっきぶらし(News Paper)

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動物病院だより

 皆さん、すっかり御無沙汰いたしましたが、お変わりありませんか?
 今年の夏は、あったのでしょうか?太陽がギラギラ照りつけて、汗びっしょり、なんて感じを忘れてしまうくらい、毎日ゝ雨が降り続きましたネ。
 こういった天気では、農作物の被害が深刻で、農家の人達はたいへんだと思います。しかし、動物の中では、暑い夏からのがれられてほっとしているものもいます。たとえば、ホッキョクグマやペンギン達です。特に、今回フンボルトペンギンのヒナが四羽成育中でしたから、暑い夏をどうすごすか心配せずに済みました。
 フンボルトペンギンの“ドナルド”は、松永飼育課員が、ふ化後まもなくとりあげて人工育すうした個体でした。休みの日には自分の家で餌をやり、つきっきりで面倒をみていました。何度となく体調をくずしましたが、その度にがんばってくれ、今はペンギン池で他のペンギンといっしょに元気に泳ぎまわっています。
 さて、この二ヶ月間をふりかえってみることにしましょう。もずは七月一日オオハナインコが二羽ふ化しているのを確認しました。前回は昨年の九月十九日に二羽ふ化したのですが、途中からくる病症状がでてしまい、メス1羽しか育ちませんでした。
 そこで担当の堀田飼育課員は、この失敗はくりかえすまいと、いろいろとくふうを重ねていました。まずは巣箱の改造です。埼玉のこども動物園で、使用している巣箱を参考にして、少し大きく、また深めにし、床には、石膏で浅めのお椀状のものを作りました。
 そして室内に紫外線を散光するツル―ライトを設置し、餌にビタミン剤の投与を行ないました。
 新しい巣箱を設置してまもなく、「オオハナインコが、産卵したよ」とのこと。うれしい限りです。それから待つこと一ヶ月、六月二十七日ヒナのなき声を確認しました。
 今度こそ、無事親元で巣立ってほしいとの願いをこめ、日々大きくなっていくヒナ達をながめていました。(巣箱内をこっそり見て)
 巣立った時コンクリートの床におちて足をいためてはたいへんと、放飼場にはネットを張り、落下防止をしてみました。
 その翌朝、オスのヒナが放飼場のとまり木にひょっこり姿をあらわし、翌日にはメスのヒナも無事巣立ちとあいなり、作戦は大成功でした。こうなると、飼育係名利に尽きるというものです。
 続いてチンパンジーの「ジーコ」について書くことにします。昨年十二月に生まれ、出産後、体温があがらなかったり、ミルクを飲まなかったりして、心配しましたが、その後順調に大きくなり、少しずつバナナやリンゴをかじるようになってきます。
この「ジーコ」の右の額のところに、イボ状の物ができて、少しずつ大きくなっているとのことで、七月八日麻酔をしてとり除くことにしました。
 担当の小野田飼育課員に抱いてもらい、ジーコの口にマスクをつけて麻酔をかけてとり除く手術を行ないました。
 手術後、患部が化膿しないように、抗生物質の注射を行ないました。これで、完全に私は、ジーコから嫌われてしまいました。今まで、ジーコの入っているオリに近づくと遊んでくれとばかりに手前に来ていたのが、治療を行なった後は、オリの奥にはりついて、来ないでくれと言わんばかりの態度に変わってしまいました。あ〜あ獣医とは、動物にとって嫌われ者なんでスヨ!!(ぼやき…ぼやき…)
 いろいろなでき事に追われているうちに、昨年九月からの仮診療所ともお別れの時がきました。一面で詳しい紹介がありましたように、八月十八日に、新しい病院が完成しました。今までの病院の約三倍ぐらいの広さになっています。この約一年間仮住いで狭いところですべてやってきましたので、突然広い所に移って、どこにどのような物を入れたのかから始まって、部屋のスイッチの位置やその他器材の使い方を覚えていくのがたいへんです。
 そして、いつまでも病院をきれいにしておく努力が必要なのです。がんばりまーす。
 新しい病院で、入院した個体が少しでも退院できるように、努めたいと思います。
 あちらこちらの動物園で動物病院が新しくなり、充実されています。それらの病院を参考にしながら、少しずつ機能を果たしてゆきたいと思います。
(八木智子)

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