でっきぶらし(News Paper)

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動物病院だより

 木々の葉が色づき、朝夕めっきり冷えこむようになりましたが、皆さんお変わりありませんか。
 動物病院も八月十九日より引越し作業が始まり、九月十一日無事オープンの運びとなりました。前号で御紹介しましたように、前の動物病院と比べて約三倍の広さとなりました。そして目的別に部屋が分かれていますから、合理的になったわけです。けれどその分、そこにたどりつくまで歩かなければならないので、「あっ忘れた」とか、検査となれば、院内をバタバタ。右を向けば○○できる、左をむけば○○できるといった生活を仮住まいのサイ舎で行なってきた私達にとってぜいたくな悩みを抱いている今日この頃であります。
 さて、この病院の入院患者の第一号は、熱帯鳥類館で飼育中の「オニオオハシ」のオスでした。
 九月五日の朝、担当の清水飼育課員より電話があり「おしりのところに塊が見えるよ」とのこと。さっそく行って見ると確かに見えます。とりあえず、何か確認する為、捕獲してみたところ、総排泄膣のすぐ下のところに約五センチほどの腫瘍がありました。
 直ちに病院に運び、手術を行なうことにしました。新しい手術室の天井にとりつけられた二基の無影灯で照らしだされた術部は、血管走行がわかりやすく、摘出手術はさほど出血することもなく、無事終了しました。
 手術は、吸入麻酔で行ないましたから、麻酔からさめるのも早く、入院ケージに移すとさっそく餌を食べてくれました。その後経過もよく、九月十二日無事退院。現在元気で熱帯鳥類館にいます。
 新しい病院の内に検疫室を作ったことは前号で御紹介しましたね。その部屋の第一号はチンパンジーでした。
 十月十一日札幌の円山動物園よりやってきた「カムイ」です。検査の為麻酔をし、採血等を行ない、二週間の病院ぐらしとなりました。今度の病院には新兵器がとりつけられています。それは、ビデオ撮影ができるよう、検疫、入院、手術室等にカメラ設置用の端子がつけられています。さっそくカメラを設置し、事務室に居ながらにしてチンパンジーの様子を見られ、威力を発揮してくれました。
 検疫も無事終了し、十月二十四日類人猿舎に移動することにし、精神安定剤をミルクに麻酔薬をヨーグルトに混ぜ、与えました。ヨーグルトは何の疑いもなく食べてくれたのですが、ミルクは半分位飲んだ後「あれっこりゃいつもと違う」と思ったらしく、吐きだし、それ以上近づいて飲もうとはしませんでした。しかたがないので、そのまま様子をみることにしました。
 一時間ほどしてみると、何やらボーとした状態、少しずつ効果が現れてきたようでした。しかし、捕まえて何かできるまでには至らなかったので、少し麻酔薬をうち静かになったところで運びだし、無事終了となりました。今後はピーチやパンジーとうまく同居できるかが問題となってきます。
 さて、このところちょっとしたおめでたが続きました。まずは九月一日にブラッザグェノンという中型のサルが生まれました。彼女はお産はこれで十三回目となりいずれも自分で育ててくれています。母乳で育てたわけですから彼女のおっぱいはダラーと長くのびてしまっています。そんな乳首をまたもや子供がくわえ、口にふくんだまま眠ってしまい、ますますひっぱっている様です。でも、これもりっぱな母親としての勲章と言えるのではないでしょうか。
 続いてサイ舎横の小型サル舎に行ってみましょう。ここで九月四日にピグミーマーモセットが二頭、九月十五日にアカテタマリンが二頭生まれいずれも順調に大きくなって親の背中から枝へと移り、一人遊びをし始めています。やはり、親子いっしょにいる姿はほほえましく思えます。
 その他、バーバリシープも二頭生まれています。また会いに来て下さいネ。
(八木智子)

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