でっきぶらし(News Paper)

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人工哺育・その個体を追う(モンキー編)[ピグミーマーモセットの場合

ピグミーマーモセットも何回人工哺育したでしょう。十五g内外しかない大きさ故に、どう離乳に導いてゆくかにはコモンマーモセット以上に心配りをしていました。
しかも、せっかく大きくした大半は、折りからの風邪でバタバタ。せっかくの苦労、努力を徒労に終わらせる無情にただただ深いため息をついていました。
が、わずかな救いと言うか、その風邪が流行する少し前に二頭を甲府の遊亀動物園にブリーディングローン(繁殖の為の貸し出し)で出していたのです。その内の一頭は、私が手塩にかけて育てた個体です。
彼が難を逃れたこと、それだけでも気持ちは大きく救われていました。更なる朗報は繁殖です。一年半ぐらい経った頃でしょうか。そんな吉報が飛び込んできたのです。
しかも、単に生まれただけでなく、両親ともしっかり面倒を見ていると言うのです。にわかに信じ難い話でした。
百聞は一見にしかず、苦手な車を運転して遊亀動物園に向かったのはそれから数日後でした。三頭生まれた内の二頭はすぐに死んでしまったそうですが、一頭は間違いなくオスの背にのっかっていました。
マーモセット類はファミリーで面倒を見ます。中でもオス親の役割は重大です。哺乳時以外の七〜八割の時間帯をオス親と共に過ごしている、と言ってもいいくらいです。
それだけに、人工哺育で育った個体がそこまでの能力を有し得るかは大きな疑問でした。しかしながら、目の前で見ているのは論より証拠でした。
フロックでもなかった証明は、更なる昨年三月の出産です。少々の空白期間をおきながらも、今度は見事に二頭を育て上げました。グルーミングしあっている光景、親子四頭が戯れる光景を昨年十二月にこの目にしっかり焼きつけました。

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