でっきぶらし(News Paper)

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あらかると「ジュリー 食べてちょうだい」

人工哺育中のチンパンジーとオランウータン、二頭共にミルクだけの時期は過ぎてもう離乳期に入っています。
チンパンジーのエディは、初端からバナナをちぎって与えるとむしゃむしゃ食べ、過去の例と比べても最高にいいペースです。片やオランウータンのジュリー、こちらはエディと同様にしてみたところ、バナナを舌で押し出す始末でした。
それではと、すってどろどろにして与えてみましたが、それさえも出してしまいました。それでも根気よく繰り返し、繰り返してスプーン一杯食べさせるのに三十分。これは過去の例と比べても、最も悪いパターンです。
一番スムースなパターンを見ながら、隣で最も悪いパターンでは、さすがにストレスがたまります。個体差もあり種も違うとか、いずれ時期がくればむしゃむしゃ食べ始めるとか、適当な理由をつけて自分を慰めていましたが、一向に変化は見られません。従って、ミルクの回数も減らすことができません。
その間にも、エディのほうは離乳はどんどん進行。リンゴもバナナもそばに置いておけば勝手に食べるようになり、そんな姿を見るとこちらはますます焦りますが、それでも離乳はちっとも進みません。
無理矢理食べさせるとヒィーヒィー泣くし、わめこうがこうするしかないんだ、お前はミルクで一生過ごすつもりかと、なお強引にやるのですが、結局、私もジュリーもぐったり疲れてしまうだけです。
ジュリーはオリの隅へ行って呼んでもヒィヒィ泣くだけで来ようとしなくなり、それでも引き寄せて食べさせようとするとすぐに寝たふりです。なんとかこの状態から逃れようとする様子は哀れです。
時間的にはチンパンジーの倍ぐらいかかりつつ、離乳開始の初期の水準に近づくのに半年遅れの生後十ヶ月になってやっとでした。まだまだ離乳作業は続きます。いつになったらエディのように食べてくれるのでしょう。(池ヶ谷正志)

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