98号(1994年03月)5ページ
草食獣比べてみれば◎アジアゾウ
動物園に行く時、誰しもが真先にあげる動物の名と言えばゾウでしょう。それほど親しまれ愛されて、人々の心の中に刻み込まれています。
でも、多くの人々、特に子供達に絶大なる人気を博しているのとは裏腹に、彼らの飼育には大きな危険が伴っています。日本に動物園ができて以来、命を落とした飼育係は十名に及びます。
危険ばかりを強調しようとは思いません。彼らは大変頭のよい生き物で、仲間同士を支え合う強い社会性を持ち、また”死”をも認識し”埋葬”をする不思議な習性すら持っています。
更に食性を探ってゆくと愉快と言うか、大食漢ぶりに改めて驚きます。寸暇を惜しんで食べているのです。寝るのは三〜四時間もあれば充分で、一日の大半をひたすら食べるのに費やしているのです。
ゾウはいわゆるブラウザー、選択型の草食獣です。そう、草木の若芽を主食としているのです。おいしい若芽を求めてジャングルからジャングルへひたすら歩き続けている動物なのです。
飼育下ではワラや乾草を主食としていますが、三t半にも及ぶ体重を維持させる為の給餌量は膨大です。よくぞ食べ切るものと感心するぐらいの量です。
ところで、ゾウのうんこを御覧になったことがあるでしょうか。一個だけでも直径二十センチ近くあろうと思えるどかっとたれるうんこをです。割ってみると驚きます。
まるで、未消化物の固まりなのです。担当者の話によれば、ニンジンなんかもそのままの色で出てくるそうです。ある文献には消化効率はおおよそ40〜50%と書いてありましたが、うなずける話です。それに古い時代の生き物、と考えたりもしてしまいます。