98号(1994年03月)9ページ
草食獣比べてみれば◎ヤギ
マレーバクとは正反対にこ憎らしいばかりに何処にでも生息しているのが、ヤギです。人為的な理由もあります。ガラパゴス諸島で、ゾウガメの餌を食べ放題に食べて増えに増えてどうしようもなくなっているなんて、その最たる例でしょう。
広くはウシの仲間に入りますから、当然反芻します。が、ブラウザーかグレイザーか分けようとすると、ヤギはその中間型になります。何のことはない、何処にでも棲み、どんな草葉もむしゃむしゃ食べるって訳です。
草食獣の世界にも、食べ分け、住み分けがあって、むやみな生存競争を避け共存共栄を図っています。何でもむしゃむしゃ食べるように見えてもけっこう選んでおり、そこにはそれだけの理由があるって訳です。
が、家畜化すると、それが消えてしまいます。どんな植物でも根こそぎ食べてしまうようになります。近年、アフリカ辺りで砂漠化の広がりがうるさく叫ばれていますが、原因はそこに、つまり家畜がさんざん喰いつくした後には、例え雨が降ってももう草が生えてこないのも理由のひとつに上げられています。
私達ヒトは、強大な文明を築き上げました。近年のヒトの様子を見ていると、自らの力だけで成し遂げたような傲慢ささえ見受けられますが、おごるなかれです。交通機関だって車はせいぜい百年かそこいら、ウマには何千年の歴史があるのです。家畜に支えられて文明は発達してきたのです。
自然破壊の象窒フように言われるヤギも、どれほどヒトに貢献してきたことでしょう。畑を荒らしにきたところを捕らえられて飼い馴され、後は従順な下僕となってひたすらヒトに尽くし始めました。
ミルク、毛、毛皮、肉、骨と彼らの体の隅々までかつてヒトにとっては貴重なようでした。ガラパゴス諸島のヤギも昔の船乗り達が食料の保存用としておいたのが招いてしまった災いでしょう。(松下憲行)