でっきぶらし(News Paper)

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動物病院だより

「アライグマ、ラスカル」というテレビマンガを御存知の方も多いと思います。ラスカルという名のアライグマと一人の少年の心暖まる交流のお話です。ラスカルはいたずら者ですが、とてもかわいく友好的なアライグマです。主人公の少年とはたいへん仲が良く、お互いの心がわかります。しかしアライグマはもともと野生動物なので、自然の中で生きるのが一番だと言って最終回に山へ返しに行くというストーリーだったと思います。
人間以外の動物と心が通じ、お互いにわかりあえる。毎日動物に接している者にとっては理想的な話です。人間社会で暮らす人間以外の動物達がみんなこのようだったら、それは人間にとってもその動物にとっても一番幸せな姿でしょう。
先日ある大手新聞関西版三面記事に、アライグマについての記事が大きく掲載されました。大阪市の天王寺動物園に保護されたアライグマについての内容です。警察が拾得物として保護したものの、飼い主が現われないため預けられている「野良アライグマ」が最近特に増えてきていて、天王寺動物園ではこの2年間に13頭を預かったというものです。結局、このうち飼い主が見つかったのは1頭だけで、のこりは動物商などに引きとられたということでした。
日本平動物園でもこれとまったく同じことがおこっています。毎年必ずのように数頭のアライグマが預けられます。そしてそのほとんどは飼い主が現れず、動物商などに引き取られます。数日前にも2ヶ月預かっていた個体が一頭引き取られて行きました。このアライグマは民家に侵入し、冷蔵庫を開けて食べ物を漁っていたところをつかまえられたそうです。何と不届きなやつだ!とこのアライグマを責められますか?
皆さんはアライグマという動物を御存知でしょうか。姿、形は知っている、という方は非常に多いと思います。しかし、その食性、習性、能力といったものについてはどうでしょうか。幼い頃は比較的扱いやすい動物です。しかし成長するにつれて気性が荒くなります。攻撃的な性質で、犬、猫に比べるととても慣れにくく、ペットとしては一般の人には手に余るでしょう。また力も強く、非常に手先が器用ですので、危険動物と呼ばれてもおかしくありません。つい先日テレビのニュース番組でアライグマの捕物の様子が映し出されました。東京都内の市街地で成獣のアライグマが見つかり、つかまえるのに警察官6人で数時間かかったということでした。そう、テレビマンガのラスカルはまだ子供アライグマだったのです。
アライグマはペットショップなどで簡単に手に入るようですが、ペットとして購入する人がどこまで知った上でこの動物を選んでいるのか疑問に思います。家族同様に一緒に生活しようと考えるからにはその動物についての正しい知識を持ち、一生にわたって面倒を見るということが当然のことです。人間ではありませんが養子を迎えるということですから、かなりの覚悟が必要なことだと思います。
いざ手に負えなくなったとしても、野山に勝手に放されては大変です。アライグマは本来北アメリカを中心に生息していて、日本の動物ではありません。むやみに放すともともと日本に住んでいた動植物に被害が出ます。これは大きな環境破壊です。かといって町中に放されると冷蔵庫を物色されることになります。つかまえられて動物園で預かることとなっても、そのままずっと面倒を見ることはできません。日本平動物園はアライグマは展示していませんし、展示する場所もありません。それに毎年数多く捨てられるペットのすべてを飼育していると、どんどんたまって大変なことになります。捨てられたアライグマは行く先も見えず、やっかい者として見られています。本当は一番の被害者なのでしょうが。
このような話は何もアライグマに限ったことではありません。動物園には次々に様々な動物が持ち込まれています。傷つき弱った日本の野生動物についてはもちろん治療をして野生へ帰す努力をします。しかしもともと誰かに飼われていたものについては最後の最後まで責任を持つということはできません。
皆さんもペットを飼おうと思った時には、それが犬、猫であれ小鳥、金魚であれ、その動物のことをよく知って、よく考えた上で覚悟を決めて下さい。動物を飼うことはすばらしいことだと思いますが、それは人間もその動物もお互いに幸せに暮らせてこそ言えることだと思います。(高見一利)

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