70号(1989年07月)14ページ
動物病院うらばなし 〜 ものまねカラス 〜
梅から始まって桜、フジ、ツツジ、アジサイと次々に花が咲き、新緑がまぶしい季節となりましたが、皆さんお元気ですか?
先日、「ZOOしずおか]の編集会議が開かれ、その席上「現場の声」のページを作ろうということになり、このコーナーが誕生しました。これから半年ごとにうれしい出来事、悲しいお知らせ、時にはびっくりした事など「生の声」をお伝えしたいと思います。皆さんからも感想、ご意見などお聞かせいただければ、より一層このコーナーのもつ意義が大きくなると思います。よろしくお願い申し上げます。
まずは、ただ今入院中の動物達について一言。いつもこの季節になると動物病院の中は、皆さんが届けて下さったスズメ、ツバメ、ムクドリといったヒナ達、あるいはタヌキ、ハクビシンなどの子供たちでいっぱいとなり、所狭しとケージが並ぶようになります。
その中に、ハシボソカラスが1羽保護されてきました。なんでも県立総合病院の駐車場に、飛べずにいたということで、5月4日に市内北安東の方が届けてくれました。このカラス、とっても人に慣れており、片方の翼の羽根を切って、飛べないようにしてありました。どうやらだれかが飼っていたように思われました。カラスは、頭のいい鳥ですから、ヒナの時から飼うと非常に人になついてくれます。しかし、それにも限度があり、かわいい以上に、いたずらをするようになる恐れがあるので翼がはえそろったからといってそのまま野生にもどすわけにはいかないのです。
どうしたものかと思いつつ飼っていたのですが、ある日のことです。ペンギン担当の鳥羽飼育課員が入院中のフンボルトペンギンのヒナ達に餌をやっていると、犬のなき声がすると言うのです。あたりを見回しても犬の姿はありません。なんとこのカラスが犬のなき声をまねしていたのです。
そのなき方も「ウワァン、ウワァン」といった単純なものではなく、甘えているようなかわいいなき方なのです。
もっとびっくりしたことは、このカラスが入っているケージの前側に、入院中のワライカワセミのケージをおいたところ、このなき声をも練習し始めたのです。ワライカワセミのなき方は「ワァオ、ワァオ、ワァ〜ァ」と独特な声ですが、カラス君は今の所、「ワァオ、ワァオ」あたりまでです。
カラスの世界では、このカラス君、まあ、ものまねの天才といったところではないでしょうか。
(獣医師 八木智子)