168号(2006年02月)0ページ
クモザル母さんの親ごころ
園内の池の島にいるジェフロイクモザルのお父さん「ホープ」が、お母さん「ハート」と子供「ハープ」から別居して、中型サル舎に引っ越しした話を165号で掲載しました。その後しばらくすると、母子がいるクモザル島から子供のギャーギャーと泣き叫ぶ声が聞こえてくるようになりました。
しばらくその声が続くので心配になり、のぞきに行くと、子供は母親とは離れたところで鳴いているのです。母親は止まり木の高い場所からその姿を見ているだけで、子供の所へ行こうともしません。子供は母親のいる止まり木の高い所へは登って行く勇気がなく、泣いているばかり。母親が育児放棄したのではと心配でしばらく見ていると、やっと子供の所へ寄って行きました。子供はしっかり母親にしがみつき一安心。こういう事がそれから毎日続きました。
それで思いあたったのは、これはきっと母親が子供を一人立ちさせようとしているのではないかと。それからは鳴き声が聞こえてもあまり心配せず、それを聞きながら他の仕事をしていました。がある日、いつまで経っても子供の泣き声が止まりません。気になって見に行くと、いつも通りの状態で、しばらく見ていても母親は行く気配がありません。そこで、給餌をかねてクモザル島へ上陸することにしました(ちなみに、島へは専用のボートをこいで渡っています)。
餌を所定の場所へ置き母親を餌のある下へ寄せて、子供を母親の方へ追おうと寄って行くと、子供は自分を捕まえに来たと思ったのか、なお大きな声で泣き続けました。そのとたん、母親が子供に何かされると思ったのか私の所へ来て、年取って根性がなくなった私の頭の毛を思いっきりかきむしり、攻撃に出たのでびっくり。しかしそのお陰で子供は母親が近くに来たのでしがみつくことができました。
母親にしてみると、私の行動は大きなお世話なのかも。自分としてみれば、心を鬼にして独り立ちさせようとしているのに、邪魔するなということかもしれません。そんな事があってから1ヶ月ほど経ち、子供が1才の誕生日を迎えた頃より、子供は母親から離れても泣くことがなくなり、親離れ子離れは無事成功しそうです。
(池ヶ谷 正志)