飼育日誌

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【ブログ】中型サルのお引越し エピソード2

バックヤード棟へ移動したサル達の部屋は、それぞれ大部屋と小部屋の2部屋から成り、
大部屋を掃除するためには群れの全頭が小部屋へ移動してもらわなければなりません。

移動した翌日から「ご飯は小部屋で食べようね」作戦を始めました。
小部屋に食事を用意し、2部屋を仕切る扉を開けます。
ニホンザルの花子やブラッザグエノンのユウキはすぐに部屋に入ってきてくれましたが、
多くの個体はやはり警戒し入って来ません。
少しでも小部屋に入って来たり、覗いてくれた個体にはドングリや木の実のご褒美を与えました。

少しずつ、小部屋へ来て採食することを覚えてくれましたが、油断は禁物。
先走って扉を閉めようとすると、警戒心の強い個体は
「小部屋に行くと(扉を閉められて)怖い」と覚えてしまいます。
扉をロックする閂(かんぬき)のわずかな音でさえ、驚いて小部屋から出て行ってしまいます。
そこで、わざと閂の音をさせたり、いつでも扉を閉められるような状態で扉を開けたりすることで、
食事中にちょっと音がしても何もないよ、気にしなくていいよと覚えてもらうようにしました。

最初に成功したのはシシオザルの群れでした。8日目の夕方、シシオザルの3頭が小部屋に入りました。
数日前から、それぞれが別々に小部屋に来て採食するようになっており、
「3頭のタイミングさえ合えば扉を閉められるっ!!」という日が続いていました。

小部屋に入った3頭は、好みの食べ物を探したり、採食に夢中になっています。
「これならいけるかも!」とすぐに、静かに扉を閉め始めました。
※しかしこの部屋は、ジャガーなどの大型肉食獣も飼育できるように設計されている部屋のため、
 扉が非常に大きく重いのです…。どんなに丁寧に作業しても音が出ます。

3頭も音に気付きましたが、チュリナとテトは顔を扉に向けたものの
「…っ!! でも別にいっか。ご飯ご飯~♪」とその場を動きませんでした。

しかしまだ子供のあまちゃんは少し怖かったのか、お急ぎで大部屋へ走り出てしまいました。
「失敗か…!またゼロからやり直し…??」と思った矢先、あまちゃんはくるっと方向転換し、
今度は大急ぎで小部屋へ戻ってきました。

扉の音は嫌だけど、チュリナとテトと離れて一人になるのはもっと嫌だったようです。

かくして重い扉をゆっくりと閉める一連の動作で、
なんとか3頭すべて小部屋に入ってもらうことができました。

30分ほどかけて1週間分の汚れを洗い流し、3頭はきれいになった大部屋へ戻っていきました。

この頃から、ニホンザルやブラッザグエノンがよく鳴くようになりました。
中型サル舎にいた時、飼育係を見つけた時や、
寝室と放飼場を出入りする時に発するような聞きなれた声です。

すると、翌日の昼には隣のブラッザグエノン♀群れが4頭とも、
夕方にはブラッザグエノン♂群れが2頭とも小部屋へ移動してくれ、扉も閉めることができました。

まるで、「みんな小部屋に入れば大部屋をお掃除してくれるから!怖くないから大丈夫」と
サルたちの間で伝言ゲームが行われたかのようでした。
サルたちはお互いの様子をよく観察しているので、あながち嘘でもないかもしれません。

こうして少しずつ、日々の給餌や清掃作業の流れが出来ていきました。

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