でっきぶらし(News Paper)

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111号(1996年05月)8ページ

動物の仕草・動作あれこれ(?W)食事の光景 「オオアリクイ、代用食の

 リフトに乗って上がってゆけば、静岡市内を一望できる展望台と爬虫類館があります。が、それだけではありません。哺乳類もたった1種類ながら飼育されています。オオアリクイです。
 一見どころか、見れば見るほど奇妙な生き物です。この仕事について30年近く、実に様々な動物を見てきながらも、この動物に接していると不思議な形容しがたい感覚にとらわれます。
 だいたい歯がないことからして変です。細長くとがった顔、大型の猛禽を想像させる太くしっかりのびた前足の爪、大型のうちわのように長く毛の伸びた尾、その形態はアジアやアフリカに棲むどの動物ともイメージはつながりません。そう、生息地は中南米です。
 奇妙な形態は、その名の通りアリ、シロアリを常食しているのと決して無関係ではありません。いえ、そのような生活により適応したればこその形態でしょう。アリを食べるのに歯だって必要ない訳です。
 では、そのアリクイに一日にどれくらいのアリを与えているのかなんて聞かないで下さい。無理です。一日分とて確保できるものではありません。とっておきの“代用食”で彼らの健康はしっかり維持されています。
 とり肉にレバー、ドッグフード、犬用粉ミルク、生卵の黄身、ヨーグルト、それらを少々のお湯といっしょにミキサーにかけて泥状にしたものを与えています。栄養はばっちり満点でしょう。
 扉の細い隙間からとがった顔を出し、その口から青黒く細長い舌べらが出てきてピチャピチャ、実に見事に舐めながら食べてゆきます。舌べらは、別の生き物のように容器の中を自在に動き回ります。
 この光景の“仕草”をお客様に見せられないのは残念です。やたら放飼場の隅をほじくり返す仕草しか見せられませんが、獣舎の構造上やむを得ません。御容赦下さい。

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