でっきぶらし(News Paper)

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111号(1996年05月)13ページ

あらかると 「ダンボの反抗」

 ゴールデンウィーク真っ只中、5月4日の調教中の出来事でした。
 アジアゾウ・ダンボ(推定30才)との27年間の付き合いを一瞬にして、無残にも裏切られてしまいました。
 内容は、調教の最後に暑かったためにプールに入れようとの命令がきっかけでした。入ろうとしなかったので、左耳に手鉤をかけて無理矢理入れようと鼻の正面に入ったその瞬間でした。
 ダンボの鼻で抱えられるようにして2mくらい飛ばされ、堀の手前にある擬岩にひっかかって回転して、2m下の堀に落下してしまいました。その時のダンボは、何かしたのかなというような様子で、落下した私を見降ろしていました。
 しかし、ダンボはしてやったりと思っていたのかもしれません。今まで私に悪いことをすると怒られ、何をするにも押さえられていたことがあったからです。
 10年前くらいから、ダンボは気性の荒い性格を示すようになっていました。下位の人に攻撃的な態度を取るようになっていたのです。
 特に数年前より新人1名が入って、ダンボは自分の方がここに住んでいるのが長いのだからうろうろするなと言うように、水をかけたり鼻を振り自分が一番だとの態度を取りつつありました。
 堀から上がった私は頭から血が出ているのに気付きました。それでも、ダンボの頭を手鉤で2回殴り主人としての威厳を示し、餌を与えることも忘れませんでした。傷の場所は頭部、入院せざるを得ない破目になってしまいました。
 その後、人手が足りないための作業変更なども悪い方に作用したのでしょう。日に日に気は荒くなり、落ち着かない様子を示し、監視小屋に水をかけたり小石を飛ばしたりするなど、ますます手がつけられなくなりました。
 2週間入院、自宅療養した後に仕事に復帰したのですが、ダンボの態度、目つきは以前より悪くなっていて、私に対しても優しいまなざしは見られなくなりました。また、ダンボとは一緒に中に入らなくなったことで、なおいっそう自らが一番だと思い込んでいるようでもありました。
 最近は柵の外から命令をかけると、今までのように命令は聞くようになっています。今後も後継者が作業をしやすくするために、最低限度の取扱いはできるように付き合ってゆく予定です。
(佐野一成)

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